■希少疾患と闘う3歳の男の子

平井謙くん
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 熊本大学の工学部で教壇に立つのは勝田陽介准教授。「希少疾患に分類される患者はいっぱいいる。そういう人たちに薬が届かない。すごくお金をかけても、採算が取れなければ製薬会社はつくることができない」(勝田准教授)

 熊本県玉東町(ぎょくとうまち)に暮らす3歳の平井謙くんは、遺伝子が変異し血管が異常に伸びてしまう病を患っている。そのため、血を吐いたり、てんかんが起きてしまうという。同じ症例は国内で6例報告されている。

「この子の胸の中には針金みたいなコイルがいっぱい詰まっている。頑張っているなって感じはしますね」(母・茉衣美さん)。

「先生たちに呼ばれて説明受けたんですけど全くわからない。長生きできるんだろうか、すぐ死ぬんだろうか、そこばっかり考えていた」(父・譲さん)

 異常に伸びた血管を塞ぎ、てんかんを抑えるための装置を体に入れている。

 国内の患者の数が5万人に満たない病は希少疾患と呼ばれ、世界には7000種、3億人の患者がいると推計されている。半数が謙くんのような子どもで、大人になる前に亡くなるケースもある。ほとんどに治療法がない。謙くんは血管が伸びるたび、入院と手術を繰り返している。

「僕たちの技術はひとつうまくいくとしたらいろいろな希少疾患に広がりがある。ひとつ治すことができたら、これもあれもって治すことができる可能性がある」(勝田准教授)

 多くの病には遺伝子からつくられるたんぱく質が関係している。たんぱく質には免疫や代謝、神経伝達など重要な役割を持つものもあり、このバランスが崩れると病気が引き起こされる。謙くんの病気も変異した遺伝子からつくられるたんぱく質が関係していると考えられている。

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