■それでも歩みを止めない

長谷川さん
拡大する

 どんな状況でも、研究者たちは開発を進めるしかない。

「今回届いたのが患者さん由来の細胞で増殖できる数に限りがあったり、かなりデリケートなので管理に気を使う」(長谷川さん)

 研究はヒトへの臨床試験を見据えた次のステップに。進むたび、開発資金は膨れ上がる。

 2025年5月、血管が異常に伸びる病を患う謙くんは19回目の手術を終え退院した。薬がない現状では、手術を繰り返していかなければ生きてはいけない。

「安全性が担保されていない、担保されるべきというのはすごく理解できる。まったくもって手が届かないなら仕方ないですけど、少しでも可能性が残されていれば、あの時ああしとけばよかったとは思いたくない」(母・茉衣美さん)

 研究チームは今日も薬の開発を続けている。次は十億円を超える資金を集める必要がある。

「一番の勝負どころじゃないですかね。臨床試験に進めるかもそうですし、今自分が倒れたらどうなるんだろうと考えると怖さはある。みんな頑張ってくれている時に研究費がなくなってしまったらどうしようって。いろいろな人の思いが少しずつ大きくなる。一生懸命頑張らないといけないと感じる」(勝田准教授)

 「死の谷」の向こうに薬を待つ人がいる。研究者たちはきょうも歩みを進めている。

(熊本朝日放送制作 テレメンタリー『「死の谷」に挑む~かつての創薬大国で~』より)

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