見事タイトル獲得となった鎌田
バルセロナ、ウェストハム、レンジャーズと各国の強豪を打ち破り、EL優勝を決めたフランクフルト。今季リーグ戦は11位と奮わなかったが、ELでは好調を維持しており、チームにタイトルをもたらした。そんなフランクフルトの攻撃陣をけん引し存在感を示したのが、日本代表MFの鎌田大地である。
昨季はリーグ戦で12アシストを記録するなど、飛躍の年となった鎌田。今季序盤はその勢いを失ってしまったが、シーズンが進むにつれて調子を取り戻し、特にELでは欠かせない存在となっている。レンジャーズとのファイナルでもその攻撃性能は光っていた。バルセロナ戦、ウェストハム戦に比べてマークが激しく、前を向こうとするもファウルで止められてしまう場面もあり警戒されていたが、それでも3本のキーパスを記録。得点に絡むことはできなかったが、守備面でも3度のタックルを成功させるなど、攻守両面で輝きを放っている。英『90min』では「コスティッチに続くフランクフルトの脅威。素早い動き出しとパスで攻撃を活性化させ、レンジャーズの守備陣を混乱させた」と高い評価を得ている。
そんな鎌田には早くもステップアップの話が舞い込んでいる。英『Sport Witness』によればプレミアリーグのトッテナムやリーガ・エスパニョーラのセビージャが関心を寄せていると報じている。しかし、鎌田自身はフランクフルトの残留を望んでおり、今後もチームで戦うことが予想される。
長い目で見れば移籍は悪くないが、日本代表としてワールドカップ・カタール大会に出場するのであれば残留がベストだ。
理由の一つは鎌田の最適なポジションにある。鎌田はシャドーやトップ下で生きる選手であり、そのポジションを採用していないチームはある。噂に上がっているトッテナムは採用しているが、そうでないチームに移籍することになれば苦しむ未来は目に見えている。その点、フランクフルトでは自身が最も輝くことができるポジションで起用されており、最大限のパフォーマンスを披露できている。
また、カタール大会は11月開催であり、8月から欧州のシーズンが始まれば本大会までに約3カ月しか時間がない。現状鎌田は日本代表でもそれほど絶対的な存在ではないため、今回のW杯に参加するのであれば移籍はリスクが高すぎる。
6月のブラジル戦含む親善試合では招集が濃厚な鎌田だが、どう起用されるのか気になるところだ。現状のシステムは[4-3-3]で、鎌田が得意とするシャドーがない。中盤3枚は遠藤航、田中碧、守田英正がほぼ固定されており、彼らは攻守にバランスの取れた万能型だ。鎌田はより攻撃に特化したタイプであり、やってみなければ分からないが、インサイドハーフでの起用は難しいと予想できる。
本大会直前ではあるが、鎌田を中心とした例えば[4-2-3-1]にシステムを変更するのも悪くない。ライン間で受ける技術は世界最高峰であり、英『The Guardian』では「ウェストハムのデクラン・ライスでさえ捕まえられない」とポジショニングスキルを絶賛している。代表チームではクラブよりも守備が緩くなることが予想され、鎌田を攻撃の中心にしてもいい。
南野拓実や久保建英など、攻撃の中心になると予想される選手がクラブでは軒並み難しい状況に陥っている。その点、鎌田は最高の状態で代表に合流できる可能性があり、森保一監督の采配に注目だ。