日本代表はキリンチャレンジカップ2022でパラグアイに4-1の勝利を収めた。

 鎌田大地、堂安律、三笘薫など、ワールドカップアジア最終予選では出場時間が限られた選手がスタメンに名を連ね、アグレッシブかつ魅惑的なプレーを披露。パラグアイを圧倒した。W杯南米予選は8位で敗退し、新チームへの移行期にあたる相手だけに、いまの日本とは完成度の差が出たと言える。

 鎌田、堂安は久しぶりの出場になったが、攻撃にバリエーションと破壊力をもたらしてくれた。A代表初招集となった伊藤洋輝も、前半は左SB、後半は左CBでプレーし、フル出場した。伊藤は左利きで技術、高さ、速さを兼ね備えた稀有なDFだ。

 今回は初戦ということもあり、自陣での危険なパスミスが目立ったが、連係不安が解消されれば、大きな戦力になるのは間違いない。序列重視の森保ジャパンとしては珍しく、さっそくスタメンで起用された点からも、期待の大きさはうかがえる。

 一方、絶対的レギュラーの遠藤航、吉田麻也は、次がブラジル戦ということもあり、ハーフタイムで早めに交代した。得点を挙げた浅野拓磨も同時にベンチに下がっている。おそらく予定された交代だろう。
 
 逆にフル出場した鎌田、伊藤らは良いプレーだったが、コンディション上、次のブラジル戦では出場機会がないか、短いかもしれない。それは計画通りとは思うが、これだけ可能性を見せてくれた選手は、ブラジル戦でも見たいというのが正直なところだ。

 そしてもう1人、筆者が気になった選手は、原口元気だ。試合の序盤は横パスを失敗したり、ワンタッチではたくタイミングを逃してプレッシャーにさらされるなど、田中碧や守田英正と比較すれば、彼らに至らないプレーは目についた。しかし、背後へ走り抜けるスピード、プレスの速さや強度、ドリブルの運びなど、主力の2人に勝る長所を随所に発揮したことは非常に印象的だった。

 その典型が36分の1点目、浅野のゴールをアシストしたプレーだ。伊藤からの精度の高いロングパスを浅野が競り合ったあと、原口のこぼれ球への反応は抜群に速かった。

 シャープな動きでボールを拾うと、元ウインガーの利点を生かすかのように、ドリブルでボールを運んで行く。三笘が外へ膨らんで相手DFを釣り出すと、真ん中へ飛び出した浅野へのコースが空き、そこへ原口が必殺のスルーパス。個人のスキル、連係が見事にかみ合う、素晴らしいゴールだった。
 
 60分の日本の3点目も、中央でボールを持った原口が起点に。相手の守備ブロックへドリブルで仕掛け、鋭いタッチでかわして、フリーの三笘へパスを送った。原口は前半に左足で惜しいミドルシュートを打つ場面があったので、相手は早めのシュートも警戒したはず。そこへギュッと相手の守備を密集させ、逆サイドの三笘がフリーになる。ゲームの駆け引きとしても効果的だった。走って仕掛けるインサイドハーフ、原口ならではのプレーが随所にある。

 原口はかつて、この4-3-3の布陣で自身がインサイドハーフを務める利点の1つに、「4人目になれること」を挙げた。3トップの速攻が始まったとき、それにインサイドハーフが取り残されるのではなく、ついて行って、4人目になれる。その走力やドリブルで運べる仕掛けは、原口の特性だ。

 現状、日本の中盤は遠藤、守田、田中の3人で固定され、替えのきかないコンビネーションを見せている。この阿吽の呼吸に割って入るのは非常に難しいが、原口の場合は割って入るというより、彼らとは違う、新しい選択肢を与えてくれそうだ。
 
 遠藤、守田、田中で構成される中盤はポゼッションの質が高く、ゲームコントロール力が高い。一方で原口を入れた中盤は、速攻の切れ味が鋭く、強度も高い。この辺りの特性の違いは、対戦相手の違い、たとえばドイツ戦やスペイン戦で有効な選択肢として用いることができそうだ。

 今回のW杯は直前の合宿がない。それだけに、この6月の4試合は直前合宿に相当する大事な期間だ。まずは1試合目、収穫は上々だった。次のブラジル戦、仮に最終予選の主力をぶつけて問題が噴出すれば、今後の選択肢も変わってくるかもしれない。

取材・文●清水英斗(サッカーライター)

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