日本代表はキリンカップサッカーの初戦でガーナに4-1と快勝した。まず29分の先制点は、山根の攻撃センスが光った。久保、堂安と連係しながら、敵陣深くに果敢にポジションを取って、出てきたパスから確実に決めきる。まさに川崎でもやっている山根の良さが出て、非常に良い攻撃だった。

 前半は、その山根と堂安と久保の三角形が右サイドで上手く機能していたことで、優位性が作られていた。

 ガーナは守備時に、両ウイングバックが下がって5バックになり、守備を固めてきた。それによって、相手の中盤の脇にスペースができる。そこに堂安と久保が積極的に顔を出し、パス交換しながら前進していくシーンが何度か見られた。東京五輪からともに代表でプレーして築き上げた信頼関係と阿吽の呼吸を感じた。彼ら2人に山根がしっかりとサポートに入っていく。右サイドのコンビネーションは素晴らしかった。
 
 久保と前田のA代表初ゴールも見事だった。2人には本当におめでとうと言ってあげたい。73分の久保の得点はフィニッシュが落ち着いていて、狭いエリアで自分がフリーになれるポジション取りもとても上手かった。

 82分の前田の得点には驚いたよ。裏に抜け出した伊東と最初は並走していたのに、一気にスピードを上げてDFの背後に飛び込み、伊東の折り返しにしっかり追いついた。あの速さには唖然としたね。ガーナのDFも「そこを狙うのか?」って驚いたんじゃないかな。

 そして、センターフォワードで先発した上田の働きも評価したい。

 上田はシュートの積極性があって、この6月シリーズで初めて出番を得たことで強い気持ちを感じたし、シュートのパワーや競り合いの高さなど、改めてポテンシャルの高さを感じた。

 特にポジショニングには目を見張るものがあった。前半アディショナルタイムに三笘のクロスがそのままネットを揺らした得点シーンでは、ゴール前に飛び込んだ上田と堂安がGKの注意を引き付けたことで生まれた。

 さらに久保の得点も、三笘のクロスに対し、ニアサイドに走り込んだ上田が相手を引き付けたことで背後にスペースができ、久保がフリーになれた。もちろん上田は、自分が得点を取ってアピールしたかっただろうけど、常にゴール前で危険なポジションを取っていた点は自信を持っていい。今回の日本の勝利への貢献度の高さは際立っていた。
 
 ここまで日本代表を褒めてばかりだけど、ひとつ苦言を呈するなら、山根のパスミスから生まれた43分の失点シーン。あのミスは絶対にやってはいけないプレーだ。

 山根はどこに出すつもりだったのか、全然分からない。中央の遠藤に出したかったのか、もっと飛ばして柴崎まで届かせたかったのか。いずれにしても、前半の残り時間の少ない時間帯では、必要のないプレーだった。

 2日のパラグアイ戦でも右サイドバックの伊藤のパスミスから、ボールを奪われて失点した。いい加減教訓にしろという話だよ。こんな簡単なミスで失点していたら、ワールドカップで戦う強豪相手に勝てない。ましてやワールドカップのグループステージでは、ドイツ、スペインと戦うんだから。時間帯も考えて、セーフティなプレーでゲームを締めるという部分は、チーム全体で考えていかないといけない。
 
 今回、森保監督は、ブラジル戦から大幅にスタメンを代えて、選手を試すチャレンジをした。そのなかで、ワールドカップ出場国のガーナ相手に4点を取って、1失点で抑えられたのは良かった。森保監督の「誰が出てもチームとして機能している」との試合後のコメントからも、チームが良い方向に進んでいるのが見て取れる。

 次戦のチュニジア戦は、キリンカップの決勝だ。チュニジアもワールドカップ出場国で、フィジカルに加えて足もとの強さもあって、ガーナとはまた違った強さがある。そんな相手を倒して、キリンカップ優勝で6月シリーズを締めくくってほしい。

【著者プロフィール】
金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、64歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。

【キリンカップPHOTO】日本4ー1ガーナ|久保&前田がA代表初ゴール!4発快勝でチュニジアの待つ決勝の舞台へ