日本代表は7月19日、E-1選手権の初戦で香港代表と対戦し、相馬勇紀、町野修斗、西村拓真の2ゴールで、6-0と大勝を収めた。この一戦では、新型コロナウイルス感染拡大以降、一部エリアで初めて声出し応援が解禁。人数は決して多くないものの、応援団を中心とした力強いコールが、カシマスタジアムに響き渡った。

 ただ、コールとコールの合間、スタンドに一瞬の静寂が訪れると、人一倍大きな声で指示を出す選手がいることに気付く。

「集中しろ」
「切らすな」
「もっと厳しく!」
「(鈴木)彩艶声出せ」

 最年長の水沼宏太だ。

 右ウイングで先発し、プロ15年目にしてA代表デビューを飾った32歳は、ビッグチャンスを迎えながら、ゴールこそ奪えなかったが、ピッチ上の指揮官としてハッスル全開。64分にベンチへ下がっても、そのボリュームが下がることはなかった。

 振り返れば、冒頭15分のみが公開された前日練習でも、人一倍元気な姿を見せていたのが水沼だった。ランニングでキャプテンの谷口彰悟と共に先頭を走り、鳥かごで軽い接触があれば「レフェリー!」と声を張り上げた。
【E-1選手権PHOTO】日本6ー0香港|初戦は圧巻の6得点!相馬・町野・西村がそれぞれ2ゴール、次戦へ弾みつける大勝
 
 E-1開幕前の17日にオンラインで応じた取材では、「サッカー選手である以上、目ざしてきた場所なので、初めて入ったことはすごく嬉しく思っています。ただ自分が目ざしてきたところはここで終わりではない。とにかく高みを目ざしていくことは変えずに、年長者らしく元気にひたむきにプレーしたい」と語っていた通りの活躍だ。

 森保一監督もその働きぶりを認め、香港戦後に「率先してコミュニケーションを取って、人と人を繋いでくれています。そのおかげで連係面も深まって、今日の試合で上手くいった面もあると思います」と称えている。

 水沼は、地元のクラブで、父の貴史氏も活躍した横浜F・マリノスでプロキャリアをスタートするも、出場機会を掴めず、栃木SCへレンタル移籍。以降サガン鳥栖、FC東京、セレッソ大阪と渡り歩き、2020年から再び自身の原点とも言える横浜でプレーしている。

 さすらいの元気印は、Jリーグ随一の質を誇るクロスと、持ち前のキャラクターで、カタール・ワールドカップのメンバーに食い込めるか。中国戦(24日)、韓国戦(27日)でのパフォーマンスにも大いに期待だ。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)