E-1選手権の初戦、7月19日の香港戦は6-0で大勝し、9年ぶりの大会制覇に向けて力強い一歩を踏み出した日本代表。しかし、会場となったカシマサッカースタジアムで観客5000人割れという厳しい現状にも直面した。

 人気回復・観客増につなげるためにも、24日の中国戦ではより躍動感あふれるサッカーを示し、人々を魅了する必要がある。4か月後に迫るカタール・ワールドカップ(W杯)出場への生き残りも視野に入れ、国内組の面々には強烈なアピールが求められる。

 特に注目されるのが、東京五輪世代だ。昨夏の本大会に参戦しながらA代表に定着できていない相馬勇紀(名古屋)、大迫敬介(広島)、谷晃生(湘南)らはもちろんのこと、何度か候補合宿に呼ばれながら落選の憂き目に遭った岩田智輝(横浜)、森島司(広島)、杉岡大暉(湘南)、大南拓磨(柏)らはE-1で存在感を示さなければ、先がない。

 五輪落選組と言えば、2012年ロンドン大会に出場できなかったものの、2013年E-1で代表定着の布石を打ち、2014ブラジルW杯につなげた大迫勇也(神戸)、2018年ロシアW杯ではその大迫とともにチームを引っ張った原口元気(ウニオン・ベルリン)のような例もある。ロシアW杯で主軸だった柴崎岳(レガネス)にしても、同じくロンドン五輪を逃した選手。悔しさをバネに浮上した彼らのような存在が出てきてこそ、日本代表の底上げが叶うのだ。

 2019年韓国大会にも参戦し、0-1で苦杯を喫した韓国戦にスタメン出場した森島は、その筆頭だろう。

「技術、フィジカル、スピード面で結構行かれてたんで、立ち上がりは慣れるまで大変だった。カウンターでもピンチがありましたけど、もうちょっとできることがあったんじゃないかなと思います」と釜山で悔恨の念を口にしたことを、本人も忘れてはいないはずだ。
 
 翌年の2020年から広島で背番号10を背負い、コンスタントに出場しているものの、そこまで目立った数字を残せず、後から台頭してきた三笘薫(ブライトン)や前田大然(セルティック)らに先を越される格好となった。

 だが、ドイツ代表やギリシャ代表に携わったミヒャエル・スキッベ監督が就任した今季は、ゴールへの推進力が高まり、守備面の強度や粘り強さが格段に増した印象だ。

「スキッベ監督からはクロスの入り方を言われているし、そこはプロになって一番変わったところ。ゴール前に入っていくところは3年前のE-1の時より意識していると思います。前向きな守備もすごく求められている。空いているところに戻るとか、二度追いは絶対に必要。そうやってチームを助けたい」

 森島は成長した姿を押し出し、4か月後のカタール、その後の代表も視野に入れて、アグレッシブに突き進むつもりだ。
 
 2019年コパ・アメリカに参戦した杉岡と岩田も、それぞれに紆余曲折を経て、再び日の丸を背負うことになった選手だ。特に杉岡は「ポスト長友佑都(FC東京)の筆頭候補」と評されるほど、左SBでインパクトを残した。が、2020年に湘南から移籍した鹿島では思うように出番を得られず、日の当たる舞台からも遠ざかった。

 悔しい1年半を経て、2021年夏に古巣復帰してからは、持ち前の球際の強さや献身性、左足の強烈なキックを取り戻し、浮上のきっかけを掴んだという。

 岩田にしても、大分トリニータ時代は右SB要員として位置付けられていたが、2021年に横浜へ赴いてからはDFとボランチのできるマルチ型へと変貌。その器用さゆえに代表選出が遠のくといった皮肉な状況に陥っていた。

「昨年からボランチをやらせてもらっているし、今回はボランチとして勝負したい。遠藤航選手(シュツットガルト)を見ていると、球際や1対1がすごく強いし、上手さもある。状況判断も含めてもっともっと伸ばさないといけない」と、本人は何をすべきかを明確に見定め、3年ぶりの代表に復帰してきたのだ。

 そのうえで、香港戦の杉岡と岩田を見る限りだと、代表定着への思いは感じられたが、「欧州組に割って入るんだ」という勢いや凄みは物足りなかった。杉岡は1対1でかわされたり、裏を取られるミスが何度かあったし、攻撃参加も少なかった。岩田も不慣れな周囲との関係性もあってポジショニングに苦慮している様子で、中盤をコントロールしきれない部分があった。そこは残り2戦で改善しなければならない部分と言っていい。

 香港戦は途中出場で16分間プレーした大南も「自分らしさは出せた」とは言うものの、まだまだA代表の一歩を踏み出したところ。右SBとしては最終予選経験者の山根視来(川崎)、今回未招集の酒井宏樹(浦和)や長友がいることを考えると、本当の勝負はここからだ。
 
「すごく難しいですけど、残っていけると思っているので。『やってやろう』という気持ちはあります」と本人も意気込みを新たにしていた。

 彼らが価値を最も問われる場になるのは、27日の最終戦・韓国戦。まずはその舞台に立てるかが肝要だ。出番を得られた場合には、9年前の柿谷曜一朗(名古屋)や山口蛍(神戸)らが残した以上のインパクトを示さなければならない。2人は当時のE-1制覇に大きく貢献し、2014年のブラジルW杯に出場している。

 カタールW杯まで4か月しかなく、ハードルは極めて高い。「石にかじりついても食らいつく」という覚悟と闘志を示すことから、全てが始まる。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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