9月下旬のドイツ遠征に参加する日本代表のメンバーが発表された。今回の遠征は、2か月後に迫るワールドカップの開幕前、最後の準備期間となる。カタールの地で躍進するために、この貴重な機会をいかに活用すべきなのか、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が激論を交わした。
■必要なポストプレーヤー
――まずは、今回の日本代表メンバー選出で注目した選手は誰ですか。
大住「一番の驚きは、やっぱり町野修斗だよね。森保一監督が持っているテーマからすれば、驚きではないんだけどね。ポストプレーヤーが欲しくて、現状で使える選手は町野しかいないということだと思うけど。西村拓真がケガしていなかったら、西村が選ばれていたかもしれないなと思うけど」
後藤「まったくその通り。町野は一応、前回の招集で合格点を出したんだろうね。CFのポジションには適役がいないから、誰か欲しいよね」
――ポストプレーヤーを置くのが、やはり森保監督の理想の戦い方なのでしょうか。
大住「それがずっと森保ジャパンの戦い方だったからね。まずは大迫勇也ありきで、そこにどう他の選手が絡んでいくかというのが攻撃の組み立て方だったから。動き回る古橋亨梧をCFに起用するとまでは、まだ思い切れないんじゃないかな。試すならば、このタイミングしかないと思う。大迫は調子が悪くて、さらにケガをしてという状況で、これではワールドカップの段階でトップフォームに戻っていることは、あまり期待できないと思う。だから、もしかしたら違うやり方も考えないといけないかもしれない。使えそうだという攻撃陣のタレントはたくさんいるんだから。それをどうにか組み合わせて、ポストプレーヤーというか軸になる選手がいなくても、ごちゃごちゃした状態からでも突破して点を取るという形が必要かもしれない」
■2010年の本田のように
後藤「今までポストプレーヤーと思われていなかったけれども、そこのポジションでできる選手がいるかもしれないね。2010年の南アフリカ大会で、本田圭佑をCFで起用したようにね。今、僕の頭に浮かんでいるのは南野拓実。そういうテストをするか、それとも町野がすごく良いプレーを見せるのか、あるいはポストプレーヤーなしで戦うのか」
大住「ポストプレーヤーは相手を背負ってプレーするんだよね。ドイツの身長190センチクラスのCBを背負って、フィジカルの圧力に耐えてボールを止めて、さばくということができないといけない。南野にCFができないと言うわけじゃないけど、そういうプレーはちょっと無理だよね」
後藤「無理かどうか、一回やってほしいよ。彼くらいの技術があれば、フィジカルで劣勢でも何とか補うことができるかもしれない」
大住「鎌田大地はそういう形で何度か試したけど、ダメだったね。森保監督は体が大きいからできるかなと思ったんだろうけど、そうじゃなかったね」
後藤「南野の技術力で、ボールを収めてつなぐことができればいいんだけどね」
大住「アメリカの大きなCBを相手にやらせてみるのは、悪くないかもしれない」
■もう時間はない
後藤「南野も町野もダメだったら、しょうがない」
大住「そうなると、時間がなくなっちゃうんだよね」
後藤「いずれにせよ、もう時間はないよ。3月のオーストラリア戦までの流れでやれれば、それが一番良かったのかもしれないけど、いろいろ状況が変わってきちゃった。結局、ぶっつけ本番みたいになるんじゃないかな。南野はモナコに行って、あまりうまくいっていないし。一方で、同じく移籍した久保建英は、トップのポジションで結構良い仕事をしている。いろいろみんな状況が変わってきている。それでも昨シーズンまでと同じようにやっているのは、伊東純也と堂安律くらいだね」
――移籍の影響は大きいですね。
後藤「それは当然、状況は変わるよ。移籍した選手の状況が一変するのは、どの国の代表だって一緒でしょ」
大住「移籍しなくても、どんどん新しい選手が来るからね」
後藤「新しい監督が来て、新しいチームメイトが来る。新しいシーズンになったら、いろいろなことが変わるから」
大住「先週までは中心選手だったのに、お払い箱になることもある」
後藤「そういうことに備えて、森保監督たちはラージグループをつくってきたんだから」