日本代表の「10番」を背負う男は、カタール・ワールドカップで輝けるのか? 左サイドでも、トップ下でも、南野拓実は際立つパフォーマンスを見せられていない。本稿では、本来の実力を発揮しきれていない27歳アタッカーのベストな起用法を考察。森保ジャパンを取材する3人の記者に見解をうかがった。

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▼飯間健記者(スポーツニッポン新聞社)の見解
 森保ジャパンの立ち上げから牽引してきた背番号10は、9月のドイツ遠征で大きく序列を落とした。左サイドは久保建英が台頭。守備で高い強度を示すだけではなく、ゲームを作るプレーも披露した。そして、“ジョーカー”三笘薫のドリブル突破は、世界でも通用すると代表やクラブを通じて証明している。トップ下では鎌田大地がタメを作り、フィニッシャーとしても存在感を発揮した。

 南野はアジア最終予選で、左サイドでもゴール前での仕事ができるように工夫していたが、どうしてもピッチ中央に寄ってしまう傾向が強く、“左のポジション”のタスクをこなせていたとは言いがたい。

 最も輝けるポジションは、本人も口にしているようにトップ下。だが、9月の親善試合のエクアドル戦のようにスピード系FWとはコンビネーション構築が難しく、大迫勇也のような起点になれるタイプが最前線にいなければ良さは半減してしまう。そして、日本代表での17得点は全てスタメン時に挙げたもの。途中出場で流れを変えられるタイプではないとも考えている。

 ただ、落選か?といえば違う。鎌田以外でトップ下が務まるのは南野しかいない。そして忘れられないのが、コロナ禍によって海外組だけでメンバーが組まれた2020年11月の親善試合パナマ戦。1トップの位置にいながら流動的に動き回り、またエリア内に侵入した時は脅威になった。

“0トップ”システムは、2020年11月以降トライしていないが、南野のクイックネスや決定力、混戦での強さを活かす道があるはずだ。ちなみに大会直前で1トップに据えられて大ブレイクした2010年南アフリカW杯の本田圭佑の例もある。
 
▼唐沢裕亮記者(東京新聞)の見解
 W杯を2か月後に控えての「4-2-3-1」回帰には、チャンピオンズリーグ(CL)で好パフォーマンスを見せる鎌田大地をトップ下で活かそうとする“鎌田シフト”も色濃くのぞく。

 ただ、トップ下を置く布陣は南野拓実にとっても都合はいい。ゴールに正対できる中央の位置は、シュートのうまさや細かい連係でボックス内に入り込んでいく持ち味をより活かしやすい。トップ下や、下がり目の2トップの一角としてストライカーの周りを衛星的に動いてチャンスメイクしつつ、自ら仕留め役も担うというのが適任に思える。もちろん、その役割では今のところ勢いに勝る鎌田に分があり、先発をつかむのはたやすくなさそうだが……。

 スピードやドリブルを武器に途中出場から流れを変えるタイプという感じではなく、先発のほうが特長を出しやすそうだが、現状ではトップ下の2番手の位置付けか。森保一監督は、W杯中のターンオーバーも示唆していて、鎌田と交互に使っていくのであれば先発の可能性は出てくる。

 9月のアメリカ戦では久保建英が左サイドを任され、攻守の1対1で強さを示した。トップ下を主戦場とする久保を両サイドに置ける目途が立った点も、南野の中央での起用を後押しするかもしれない。
 
▼内田知宏記者(報知新聞社)の見解
 南野拓実の最大の武器は、中盤の選手でありながらFWと同じ点の取り方ができる部分だ。密集エリアでゴールを仕留められ、クロスに対してもFWのようにニアサイドにも飛び込んでいく。流れてきたボールや、遠めの位置からではなく、「中」で決められる。

 その点で4-2-3-1のトップ下に入ればゴール前で絡みやすいが、4-3-3の左ウイングでは彼の特長は活かされない。長友佑都との左サイドの関係もいまだ完成を見ていないように映る。やはりトップ下が適性ポジションになるだろう。
 
 森保ジャパンでの近況は、南野にとって好ましくない。トップ下には、ビルドアップの出口役になれる鎌田大地が特別な存在感を示している。左サイドハーフでも三笘薫という強武器が台頭し、エクアドル戦では久保建英が課題だった守備で進境を見せた。モナコで思ったような活躍ができていない南野は、エクアドル戦の厳しい表情を見ても分かるように逆風にさらされている。

 プレーの波という点では、2列目で最も少ない選手の1人で、計算しやすい。是が非でも得点が欲しい場面では、10番を思い浮かべるように。ターンオーバーのメンバー決めの際には、真っ先に指名される選手に挙げられ、W杯では必要とされる場面がやってくる。先発を確約された立場かと言われれば、そうではなくなったが、チームにとっては必要な選手であることに違いはない。

【動画】ズバリ、南野拓実の起用法は? 徹底検証、行き着いた結論とは?