森保一監督のマネジメント力。温厚だが規律を重んじる

11月1日、ついにカタールW杯の最終メンバーが発表された。都内のホテルの大広間で行われた日本代表発表会見。緊張感に包まれる中、壇上中央に座った森保一監督は「日本人の誇りを持って一丸となって最後まで戦い抜きます。ベスト8以上を目標に置いています」と意気込みを語ったあと、メンバー26人を読み上げた。

大迫勇也、原口元気といった前回大会の主軸や、旗手怜央や古橋亨梧など海外で躍動する選手が選外になるなど、森保監督の決断に対する反応が多く見られた。当然、誰が選ばれても、誰が選ばれなくても異論は必ず出る。時には非難の矢面に立たなければいけないのが監督であり、ましてや一国のナショナルチームの監督で、4年に一度のW杯のメンバー選考と考えれば、非常に重く苦しい決断だったことは間違いない。

日本代表監督としての重責。責任感の強い森保監督だからこそ、それに対して重く受け止めている。森保監督のパーソナリティを伝える上で、キーとなるのが温厚であるが規律に対して非常に厳しく、周りの意見に耳を傾けながらも選手たちの言動をしっかりと見ていることにある。選手たちに自由を与えつつ、チームとしての規律はしっかりと提示をしてマネジメントをする。

自己主張とチーム力の融合。森保監督が持つ信念

かつて森保監督は2007年に香川真司、内田篤人、槙野智章らを擁し、『調子乗り世代』と呼ばれたU-20日本代表のヘッドコーチを務めていた。個性派しかいないチームの中で森保監督は兄貴分としての立場と、指導者としての立場の両方を器用にこなし、彼らの個性を生かしながらもチームとしてまとめるときは厳しく接するなど、メリハリをつけていた。

「自己主張をすることは大事。でも、チームとして戦うにはそればかりになってしまうとまとまらない。個性を伸ばしながらも、チームとしてやって行く術を理解してもらう。そこは大事」

当時、森保監督はこう口にしていた。日本代表の監督になった今でもあの時のように同じ信念を持ってチームを率いている。

カタールW杯初戦のドイツ戦までもう2週間を切っている。中山雄太が負傷離脱し、さらに遠藤航などの主軸にケガ人が出始めているなど、かなり苦しい台所事情になってしまっていることは否めない。チーム内にも動揺が走っていると予想できる今だからこそ、森保監督は出場する選手たちの個性を尊重しながら、チームとして変わらず規律を求めて大会に臨んでほしい。

背水の陣で臨んだオーストラリア戦の国歌斉唱での涙、メンバー選考で頭に駆け巡ったこれまでの想い。そして何より五輪代表とA代表を兼任すると言う重責を担い続けてきた信念を今こそ大事にして、日本サッカーの未来をかけた大舞台に挑んでほしいと切に願う。

文・安藤隆人
 

photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru