いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はMF久保建英(レアル・ソシエダ)だ。
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「人は3か月もあれば変われる。自分のできることをやって、(代表レギュラーに)また割り込んでいきたいなと。自分が良ければチャンスは生まれると思うので、それを信じて出番を待ちたい。今は割り切っています」
カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選の中盤戦を怪我で棒に振り、「代表当落線上」と評された今年6月。久保建英は目をギラつかせながら、巻き返しを誓った。
その言葉通り、今夏赴いた新天地レアル・ソシエダでは開幕からゴールを奪い、8~10月にかけて11試合に先発。4シーズン在籍するスペイン1部でかつてないほどの輝きを放っている。
この活躍に森保一監督も着目。重要な9月シリーズのアメリカ戦で4-2-3-1の左サイドに抜擢。課題の守備も精力的にこなした久保は、及第点を与えられるパフォーマンスを見せた。
これでスタメン候補に急浮上。本人が公言した通り、3か月で自身の立場をガラリと変えた21歳のレフティは、満を持して初めての世界の大舞台に挑むことになる。
10~14歳を名門バルセロナで過ごした久保の技術と創造性は、早い段階から注目の的だった。2017年のU-17W杯、同年U-20W杯、2021年夏の東京五輪と年代別世界大会を飛び級で総なめにしてきた若武者だけに、森保ジャパンでもいち早くエースに君臨すると期待された。
実際、18歳になったばかりの2019年6月のエルサルバドル戦で初キャップを飾り、コパ・アメリカにも参戦したところまでは順調だった。本人も輝かしい未来を想像したに違いない。
しかしながら、久保が主戦場としていた右サイドには堂安律(フライブルク)と伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)が君臨。トップ下も南野拓実(モナコ)や鎌田大地(フランクフルト)が起用されていたため、思うように出場機会を増やせなかった。
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久保自身が最大のチャンスと捉えたのは、2021年9月の最終予選・中国戦。この一戦では確かに効果的なプレーを披露。ようやくスタメン奪取かと思われた。
その矢先に当時所属のマジョルカで負傷。長期離脱を強いられてしまう。その影響は大きく、予選終盤も後半から送り出されるだけ。確固たる地位は築けなかった。
加えて、想像以上にゴールが遠かった。A代表入りした時点では、金田喜稔の持つ19歳119日というA代表最年少ゴール記録更新も時間の問題と言われ、「いつまでも言われ続けるのもあれなんで、早いうちに決められれば、それで終わりなのかな」と本人も淡々と語っていた。が、20年、21年が過ぎ、22年に突入しても無得点が続いた。
長いトンネルをようやく抜け出したのが、今年6月のガーナ戦。4-1で勝利したゲームで、チーム3点目をゲット。「このまま一生入らないんじゃないかと思った時もありました」と久保は安堵感を吐露。肩の荷を下ろし、ようやく自分らしさを取り戻す。
そこからの急浮上は冒頭の通りだが、この4年間の予期せぬ停滞と紆余曲折は、むしろ久保の成長の糧になったのではないか。「バルサ育ちの天才少年」と言えども、A代表はそう簡単に出られる場所ではない。
W杯に至ってはなおさらだ。スペイン1部でレアル・マドリーからマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェに4度のレンタルを強いられ、トップ・オブ・トップに駆け上がる難しさを痛感し、フィジカル強化など努力を続けたからこそ、今がある。
もがき苦しんだ日々は確実に力になっているはず。それをカタールの大舞台で示すしかない。
とりわけ、グループステージ3戦目で対戦するスペインには、エリック・ガルシア(バルセロナ)ら少年時代から熟知する面々が数多くいる。ペドリやガビ(ともにバルセロナ)は年下だ。
そういったタレントたちに負けてはいられない。東京五輪の準決勝で敗れ、号泣した悔しさを胸に秘め、歴史的リベンジの急先鋒になってほしいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)