森保ジャパンがカタール・ワールドカップの初戦で対戦するドイツは9月に2試合を行なった。UEFAネーションズリーグのハンガリー戦を0-1で落とすと、続くイングランド戦は2点リードを奪いながら一時は逆転を許し、終盤相手のミスでなんとか3―3の引き分けに追いついた。
9月の2試合を見る限り万全とは言えないドイツ代表とはいえ、本大会となればコンディション的にも、モチベーション的にも「本番モード」に切り替えてくるはず。そんな強国に対して日本はどのように戦えばより勝機を見出せるのだろうか。
6月の試合を含め、ドイツがここ最近苦労していたのがハンガリーとイタリアだ。どちらも守備組織が秩序だっているのに加え、敵陣からのマンツーマン気味な積極プレスで攻撃をイメージ通りに構築させず、不用意なセカンドボールを拾うことで自分たちの時間帯を作り出していた。
日本のアメリカ戦で見せたようにうまくパスの出口を抑えながらスライドしてプレスを連続でかけられれば、ドイツも手を焼く。ミスパスを誘発することもできるだろうし、敵陣でボールを奪い取ることもできる。
特に右SBでの起用が予想されるテオ・ケーラーは打開力がそこまでないので、上手くそこへ誘い込みながら一気にプレスの圧力を高めてボール奪取へ行きたいところだ。ここ最近のドイツは、立ち上がりでは選手間の距離感やスペースのカバーなどが整理されていないことが多いので、感触をつかむ前に仕掛けられると面白いかもしれない。その際、ゲームインテリジェンスが高く、展開力のあるMFヨシュア・キミッヒを自由にしないことが非常に重要になる。
ひょっとしたら、しばらくはうまくいくかもしれない。だが、プレスをかけ続けるのは危険だ。なによりドイツにはハイレベルなGKがいる。マネエル・ノイアーも、控えのマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンもそうしたプレスをかいくぐり、チャンスまで持ち込む強さとうまさがある。
中盤にできたスペースへロビングボールを送り、そこから素早くカウンターへとつなげてしまうから注意が必要だ。あるいはCBから逆サイドのオフェンシブな選手へ一気にパスを飛ばしてくるので、そこを攻撃の起点にされると怖い。
プレスに行くタイミングが少しでもずれたら、素早いパス交換でいなされ、中盤にできたスペースを相手に使われてしまう。常にプレスに行けるように準備をしながら、でも「いけない」と確信したら、スッと引いて守備ブロックを作るという判断基準は明確にしておきたい。
そして常に次善策を準備しておくことが大切だ。プレスかいくぐられたときへのリスクマネージメントをボランチの遠藤航や守田英正がとりながら、例え奪いきれなくてもカウンターへは持ち込ませないようにしなければならない。そうしたゲームマネージメントを90分通して完遂することが、ドイツ戦で勝点を奪うために欠かせない条件となる。
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攻撃面ではとにかくCBのアントニオ・リュディガーをどうにかしないことにはゴール前に近づけない。ドイツはチームとしての守備組織がそこまで徹底されていない。各選手の守備範囲が広いし、対応力も優れている。
特にリュディガーの守備範囲の広さは驚くほど、持ち場を離れて飛び出してはボールを奪ったり、ブロックしてピンチを食い止める。空中戦にもめっぽう強く、圧倒的なフィジカル能力を誇るだけに生半可な攻撃では突破できない。
ただ、この飛び出したがりな気質をうまく利用することができる。カウンターチャンスにサイドへ展開したらリュディガーが出てくるので、それを見越してダイレクトやワンタッチでサポートの仲間に落とすか、センターへと蹴りこめば、一気にシュートチャンスにも持ち込めるかもしれない。
通らなくても気にせずに割り切る。1度でも阿吽の呼吸で走りこむことができたらビックチャンスになるし、単発ではなく、連続で出せるようになると面白い。
またリュディガーとCBコンビを組むニクラス・ジューレの背後は狙い目だ。センタリング時のポジショニングに難があり、飛び込んでくる敵FWにつられる癖がある。ジューレを引き連れて走り込むと、その後ろにぽっかりとスペースができるから狙わない手はない。
9月のイングランド戦でもそうした形で失点をした。右サイドからのクロスに両センターバックが外に釣りだされてしまい、右SBのケーラーがセンターまで絞らざるを得ない状況に。逆サイドまで流れてきたクロスをゴール前に詰めていた左WBルーク・ショーがフリーでシュートを決めた。
ドイツは昔から相手に力を発揮させないためのゲームプランを準備するのがうまい。だからこそ、日本も力を発揮させないゲームプランを入念に準備して、この大事な試合に臨むことが非常に重要になる。
文●中野吉之伴