「もうちょっと長く見たいですよね。どうせなる15分や20分は試してほしい」
 
 先日、YouTube動画の撮影でご一緒した元日本代表MFの戸田和幸氏とそんな話になった。森保ジャパンの3バックに関してだ。
 
 4バックをベースにチームを作ってきた森保一監督だが、9月シリーズは2試合連続で試合終盤に3―4―2―1を試行。カタールW杯ではドイツ代表、コスタリカ代表、スペイン代表と同居する難易度の高いグループに組み込まれただけに、守備時は実質5バックになって5レーン全てを埋められてディフェンス強度が上がる3―4―2―1は、重要なオプションになりうる。
 
 ただ、9月シリーズで3―4―2―1を使ったのはいずれも試合終盤の数分のみ。格上のドイツ代表やスペイン代表から勝点を奪えるチャンスが生まれた際にはなりふり構っていられないはずで、残りが数分ではなく15分や20分でも使うべきだと個人的には考える。戸田氏は「対ドイツを考えれば、最初から3バックで臨んだっていい。インテンシティー的に4バックで耐え続けるには限界がある」とまで言っていた。
 
 だからW杯最後のテストマッチとなる11月17日のカナダ戦は、個人的に3バックのより長い時間のテストを期待していた。何だったら後半頭からでもこのシステムを試すべきだと。
 
 しかし、森保監督は3バックをやはり試合終盤に試したのみ。南野拓実に代わって吉田麻也を投入した85分から、アディショナルタイムを入れても約9分間ほどだった。
 
 しかも守備強度を上げるシステムに変えながら、アディショナルタイムに山根視来が与えたPKから失点して最終的には1―2で逆転負け。後味の悪い結末だった。
 
 試合後、森保監督は「最後に試して本番にもまた使えるようにと、選手たちにも話はしていた。3バックにして相手とのマッチアップをはっきりさせ、良い距離感で攻撃もできるようになった。色んな意味でオプションとして使える」と語り、吉田も「締めなければいけないところで最低でも1―1で終わらなければいけなかったが、この形を試せたことは大きかった」とコメントしていた。
 
 しかし、疑問を感じる。こんな短い時間で十分なテストと呼べるのか。3試合で計20分間ほどしか使ってないシステムを、4年に一度の檜舞台でオプションにするのか。試合を締めるオプションとして3バックのアイデアは理に適ったものだが、選手の組み合わせを含めてテストマッチで深化は図れなかった。
 
 ドイツ代表とのW杯初戦まで残り6日。3バックはトレーニングでも試すはずだが、ほぼぶっつけ本番に近い形での運用となりそうだ。
 
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

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