[国際親善試合]日本 1-2 カナダ/11月17日/アルマクトゥームスタジアム

 試合の入りは良かった。9月に前田大然をCFに起用して快勝したアメリカ戦同様、脚力のある浅野拓磨を最前線に置く4-2-3-1で臨んだカナダ戦は、無理に前からボールを追い回すのではなく、組織だった守備で相手のパスコースをケアしながら寄せていく。カナダのビルドアップが拙かった面も合わさり、日本は高い位置でのボール奪取から攻撃につなげ、中盤での回収率も高かった。

 現に8分にはボランチの柴崎岳の浮き球のパスに走り込んだ相馬勇紀が上手く合わせて先制に成功している。

 もっともこのまま日本が試合の主導権も握るかと思われたが、カナダの身体能力の高さを生かした攻撃を受ける時間が徐々に増えていく。21分にはセットプレーから失点。そして後半は前線に人数を増やしたカナダに流れを掴まれた。

「ハッキリしなかったのが一番もったいなかった」

 そう語るのは谷口彰悟である。CBとして先発し、最終ラインを統率した男はこう試合を振り返る。

「前半の入りは悪くなかったと思います。先制点を取れたのも良かったです。ただ失点がセットプレーで取られるのはやっぱりダメだと思いますし、そこはもう一回チームとして取り組んでいかないといけない。後半はちょっと相手のやり方が変わったなかで、自分たちがどう守備をするのか、どう攻撃をするのかちょっと合っていなかったなと。そこは合わせていかなくてはいけないですし、最後にああやってPKで失点するのは本大会を想定すれば課題です」

 意思統一。これがカナダ戦のポイントになったのだろう。谷口は続ける。  

「前から行くなら全体でプレッシャーをかけないといけないし、前から行っているのに蹴られて、背後をやられるのが一番もったいない。いかないとなるともっとコンパクトに後ろをケアしながら前向きに守備ができるし、どっちが良いとかではなくてやるならハッキリやりたかった。

 前からいった前半は良かったと思いますし、前から行くのが別に悪いわけではなかったです。でも、後半は特にそうですが、行くなら全体をコンパクトにして、中盤を押し上げてスライドしないとやっぱりもったいない。ボールホルダーに簡単にヘッドアップさせないようなプレッシャーをかけないと。後半はどの辺りから奪いにいくのか曖昧になっていて、逆に自分たちから間延びするようになった印象です。合わせるところも曖昧になった部分があるので、そこは合わせていきたいです」
 後半、日本は浅野拓磨と久保建英をベンチに下げて、上田綺世、堂安律を投入。攻撃の視点を変えたが、前からいきたい前線と、ある程度、ブロックを作りたい守備陣でギャップが生じていた。

 それを感じ取ったこの日はベンチスタートだったキャプテンの吉田麻也は後半途中に谷口へ「前も低い位置からいかせて良いんじゃないか。前でコンパクトにやるより、後ろでコンパクトにやるというか、もうちょっとミドルブロック、ミドルゾーンでブロックを作っていく方向で良いんじゃないか」とアドバイスを送っている。

 1-1のスコアで攻撃陣はより前に出たいのは当たり前で、一方でスピードのあるタレントを生かそうとシンプルに背後を狙ってくるカナダに対し、守備陣が少し深くポジションを取ろうとするのも理解できる。

 要はバランスで、それは各選手がその都度でどんな振る舞いをするべきかを察知し、柔軟にプレーすることが求められる。

 谷口は「統一感はあまり出せなかったので、そこは後ろのセンターをやっている僕なり、(板倉)滉なり、(伊藤)洋輝なりがやっていかなくてはいけないし、中盤の碧だったり(柴崎)岳だったり、もっとリーダシップをもってやらなくちゃいけなかったなと思います」と語る。

 一方で今大会のメンバーは攻撃陣を中心にワールドカップ未経験のフレッシュなメンバーが多い。

 堂安も「僕も初めての舞台でどうなるか想像つかないですけど、頭をクリアにしていきたい。初戦が終わってから、(カナダ戦で)負けて良かった、あそこで改善できたと言えるようにしたい」と話す。

 果たして11月23日のワールドカップ初戦のドイツ戦へ各々が頭を揃えることはできるのか。本番では一糸乱れないパフォーマンスを見たい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト特派)

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