口をついたのは「楽しみたい」という言葉だった。

 ワールドカップの初戦、23日のドイツ戦まで残り4日の時点で心境を訊くと「ワクワクしているというか初めてなので、初めてというのは、一回しかないので楽しみたいなと今は思っています」という答えが返ってくる。

 遠藤航、守田英正を欠いたカナダ戦で柴崎岳とともにボランチで先発したのが田中碧だった。自身も大会前には負傷を抱えていたが、無事にカナダ戦でプレーし、前進することができた。

「一番は体力の問題があったので、そこは(試合を)やったので多少、良いのかなと思いますし、フィーリングの部分は対人もやっていなかったので、そこはここ(練習)でもできるので、徐々に上がっていくと思います」
 相手を見て、味方を見て、柔軟にポジショニングして、チームのバランスを取る。インテンシティの高さや運動量なども魅力であるが、彼の一番の素晴らしさは、“間でもらって味方を生かす”ボランチとしてのベースで、最も大事な能力だろう。どんなシチュエーションでもやることは変わらない。

 だからこそ、臨機応変さを求める言葉も聞かれる。

「入りは重要だと思うので、受けに回ってしまう展開もあだろうし、どうやって盛り返すかという時に、ボールを握って盛り返せるのが理想ですが、守備から盛り返すことができればひとつの手段になりますし、そういう意味では守備から流れを作るというのもすごく大事なことなのかなと思います。

 勝つことがすべだと思うので、握って勝てるならそれで良いと感じますし、点を取らなくはいけない時にどういう風に取るのか。握ったほうが良いのか、握らずにショートカウンターで攻めるのか、90分、笛が鳴ってみないと分からない部分もあります」

 ボールを握るスタンスでゲームに入るのか、相手に握らせないスタンスで入るのか。それは状況次第で柔軟に振る舞う。そんな理想の姿を彼が表現できれば、チームにとって大きなプラスであることは間違いない。

「緊張感があるのは間違いないですが、自分が(ワールドカップ予選で)初めて出たオーストラリア戦もそうですが、変にと言ったらあれですが、自分ができることは自分の持っているものを出すだです。気負いすぎても、パフォーマンスが出ないのは分かっているので、深く考えすぎるという言い方をすると語弊がありますが、まずは良いプレーをするためには自分が一番楽しむことがチームの力になるので、その90分に対して自分が一番楽しめるようにやっていきたいです」

 楽しむという意識の先に期待したい、どんな展開にも対応して中盤を仕切るパフォーマンス。彼ならそれができるはずだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト特派)

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