【識者コラム】守田のコンディションに不安で2ボランチ→3ボランチ

 11月10日にカタールの首都ドーハ入りした時は、まだワールドカップ(W杯)対応の1日前。地下鉄は「ゴールドクラブ」「ファミリー」「スタンダード」の車両に分かれて運用されていた。翌11日からはすべての車両が「スタンダード」になり、誰がどこに乗車しても良くなった。

 W杯に向けたさまざまなテストが行われ、街が次第にW杯モードに変わっていくなか、17日のカナダ戦の取材で一度アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに行き、戻ってくると一気にムードが加速していた。

 メキシコやアルゼンチンのファンが入ってきて、静かなイスラムの国が賑わいを見せている。カタールがW杯に飲み込まれようとしているとも言えるだろう。

 日本代表もいよいよW杯仕様に向けて最後の調整を行う時が来た。今回のW杯で各国とも先発メンバーを決める大きな要素になるのは「怪我人」ということになるだろう。もちろん日本も例外ではない。

 W杯前に負傷したメンバーは、9月に離脱した板倉滉(ボルシアMG)、浅野拓磨(ボーフム)を筆頭に、冨安健洋(アーセナル)、田中碧(デュッセルドルフ)、遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(スポルティング)。鎌田大地(フランクフルト)もリーグ戦を1試合欠場していたので心配されていたが、本人によれば疲労が蓄積していたということで、欠場は回復に大いに役立ったということだった。

 板倉、浅野はカナダ戦で実戦復帰したし、田中も無事にプレーできた。遠藤も脳震とうからの回復プログラムを順調にこなしているようだ。発熱のためチームに遅れて合流した三笘薫(ブライトン)も18日にはピッチに現れて走っていた。

 だが、冨安は度重なる負傷に悩まされており、起用に対しては慎重にならざるを得ないだろう。「ここで負けたら終わり」というシチュエーションでないと、再発してその後の大会で起用できなくなる心配もある。

 そしてもう1人、回復具合が心配されているのは守田だ。18日に遠藤、三笘、守田の3人は日本代表の練習場に現れてトレーニングを行った。最初にピッチに出てきたのは遠藤、続いて三笘も走り始めた。

 だが守田は室内での調整時間が長く、ずいぶん遅れてピッチに現れた。この状態からドイツ戦までに復帰するのは難しいのではないだろうか。

4-3-3スタートから攻勢に出る時にシステム変更か

 森保一監督の4-2-3-1システムは、ボランチが鍵を握っている。そこに攻守、特に「守」において安定感のある遠藤と守田はファーストチョイスとなるべき選手だろう。だがドイツ戦でその守田が使えないとすると、そこを誰にするか。

 守備を考えて板倉にすると、復帰したばかりの選手の活動量が心配される。田中、柴崎岳(レガネス)はむしろ攻撃の時に良さを発揮する。カナダ戦で試したように鎌田をボランチに置く手もあるが、押し込まれた時に鎌田を守備だけのために使い続けるのはもったいない。

 そう考えると、スタートではボランチを3枚、右から鎌田、遠藤、田中にして、そこから鎌田が飛び出すという4-3-3にするのがいいのではないだろうか。

 同じような形になったのがW杯アジア最終予選第8節、ホームのサウジアラビア戦だった。それまでの4-2-3-1から、守田、遠藤、田中を配置した中盤にして、3人の特性から3ボランチ気味になり、3人が交互に前に飛び出していったのだ。チームとしてはその時からの経験も積んでいる。

 攻撃の枚数は少なくなるが、日本が狙うのはカウンター。そのために足の速い選手を揃えており、もとより人数を多く攻撃に割いて主導権を握ろうという戦いではない。

 カナダ戦を見ても日本のインテンシティーの高さが90分間持つとは思えない。ドイツの勢いを受けるためにも、中盤の選手の位置を下げたところからスタートしたほうが体力も温存できる。

 ドイツの立場で考えると、初戦の日本で勝ち点3を奪い、2戦目のスペイン戦で最低でも引き分け、3戦目のコスタリカ戦は流して勝って決勝トーナメントに備えたいということになるだろう。日本戦で勝ち点1では、スペイン戦、コスタリカ戦で無理をしなければいけない可能性も出てくる。

 そのため、日本戦で試合終盤まで引き分けているようだったら、最後に攻勢に出てくるはずだ。そこで4-2-3-1、あるいは3-4-3または3-5-2に変化して対応するという策もあるのではないか。

 もっとも森保監督としては、この程度のことは当然考慮済みだろう。ドイツ戦の4日前から始まった非公開練習で、もしかしたらさらに大胆な形を試している可能性も……。森保監督だったらないかもしれないが、最後まで怪我人のコンディションの調整が続き、情報合戦が激しさを増すはずだ。(森雅史 / Masafumi Mori)