【専門家の目|玉田圭司】カナダ戦の出来を踏まえ、柴崎の働きに注目

 森保一監督率いる日本代表は、11月23日にカタール・ワールドカップ(W杯)初戦のドイツ代表戦に臨む。17日に行われた本大会前最後のテストマッチでカナダ代表に1-2と敗れたなか、かつて、名古屋グランパスや柏レイソルで活躍し、W杯2大会連続出場経験を持つ元日本代表FW玉田圭司氏は、絶妙アシストを決めたMF柴崎岳(レガネス)を「決定的なプレーができるのは彼しかいない」と指摘し、日本の武器になり得る存在だと見解を示した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本は本大会の向けた強化試合として、17日にカナダと対戦。ベースキャンプ地であるカタールのドーハからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ出向いて迎えた一戦では前半9分、MF柴崎岳(レガネス)からの浮き球パスに反応したMF相馬勇紀(名古屋グランパス)のゴールで先制も、同21分にセットプレーから失点、後半アディショナルタイムにはPKを与え、1-2で逆転負けを喫した。

 コンディション不良、怪我の影響からMF遠藤航(シュツットガルト)、MF守田英正(スポルティング)ら一部主力を欠いたこの試合の出来について、玉田氏は「カナダ代表のほうがやりたいことがはっきりしていましたし、1人1人の意思の疎通がカナダには感じられた一方、日本にはそれをあまり感じられなかった」と評した。

 9月に行われたアメリカ代表とのテストマッチでは、前線からのプレスが奏功し、効果的にボールを奪った流れからリズムを掴み、2-0で勝利した日本。カナダ戦でも同様の狙いは見て取れたが、「アメリカと比べてカナダのほうがプレスを剥がす術があって、なかなかはまらなかった」と、玉田氏はチームとして上手く機能していなかったと指摘する。

 コーナーキックの流れから同点ゴールを許すなど攻守に課題を覗かせた一方、数少ない収穫の1つとして玉田氏はコンディションの良さを示した選手がいた点を挙げている。その1人がMF田中碧(デュッセルドルフ)とボランチコンビを組んだ柴崎だとし、相馬の先制ゴールを演出した場面を引き合いに「決定的な仕事をするという一番の特徴が出た」とし、こう称えている。

「1点目のアシストシーンでは、ボールを持った時に一度、縦パスを味方に入れて、リターンを受けて相手最終ラインの裏へ浮き球のパスを出した。1つパスを出すことによってその選手をマークしていたディフェンダーの頭と足を止めることができたので、そのあたりのセンスはさすがだなと思いました」

 4-2-3-1システムを採用した場合、ボランチのスタメン候補には遠藤、守田の“鉄板コンビ”が真っ先に挙がるが、怪我やコンディション次第でドイツ戦の出場を回避する可能性もある。そんななかで、玉田氏は柴崎の実力について「ボランチの戦力のなかで決定的なプレーができるのは彼しかいない。それが日本の武器になってくれれば、よりチャンスが作れるんじゃないかと思います」と、期待を寄せていた。

[プロフィール]
玉田圭司(たまだ・けいじ)/1980年4月11日生まれ、千葉県出身。名門・習志野高校から99年に柏レイソルへ入団。プロ5年目で主力に定着し、2桁得点をマークした。2004年に日本代表へ初招集。名古屋グランパスへ移籍した06年にはドイツW杯へ出場し、第3戦ブラジル戦でゴールを決めた。10年南アフリカ大会でW杯2大会連続出場。国際Aマッチ通算72試合16得点を記録した。セレッソ大阪、V・ファーレン長崎にも所属し、Jリーグ通算511試合131得点した左利きのストライカー。21年に現役引退を引退した。(FOOTBALL ZONE編集部)