【専門家の目|金田喜稔】権田が好セーブで存在感「相手もうなだれていた」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月23日にカタール・ドーハのカリファ・スタジアムでカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第1節でドイツ代表(同11位)と対戦。W杯優勝経験国に対して2-1の逆転劇を演じて大金星を挙げた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した16選手を5段階(5つ星が最高、1つ星が最低)で採点した。

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<GK>
■権田修一(清水エスパルス)=★★★★★(5つ星)
 相手を倒してPKを献上したのは軽率だった。しかし、それを補って余りある好セーブを何度も見せた点を高く評価したい。連続セーブがなければ、今回の逆転劇はなし得なかった。守護神が果たした役割は大きく、最高点で文句ないだろう。相手もうなだれていたし、強烈な存在感を示していた。

<DF>
■酒井宏樹(浦和レッズ)=★★★★☆(4つ星)
→後半30分OUT
 足の状態がちょっと心配。守り難い展開が続くなかで押し込まれた時間帯も。後半に入ってからようやく守備に安定感が生まれてきた。修正力で物足りなさがあるものの、後半途中まで攻守を支えた。

■吉田麻也(シャルケ)=★★★★☆(4つ星)
 前半は耐えるので精いっぱいだった。ただ後半に入って冨安、吉田、板倉が並んだ時の3バックは安定していた。冨安や板倉の持ち上がりも促しつつ、チーム全体のいい流れを作り出していた。1失点で凌ぎ切った点も評価。

■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★★(5つ星)
 前半は苦戦を強いられたが、身体を張ってシュートを防いでいた。勝利に大きく貢献した1人。3バックになって攻撃参加で可能性を見せてくれた。冨安が入ってからぐっと良くなった印象。浅野のゴールにつながるフィードなど攻撃面でも存在感を示した。

■長友佑都(FC東京)=★★★★☆(4つ星)
→後半12分OUT
 前半は防戦一方となったなかで、粘り強い対応を披露。サイドから崩される場面は少なく、交代した後半途中まで1失点に抑えていた点は評価に値。攻撃面で関与する場面は限られたが、それでもクロスを送るなど数少ないながらも関与している。

相手のウイークポイントをあぶり出した伊東、遠藤は“デュエル王”が分かる出来

<MF>
■遠藤 航(シュツットガルト)=★★★★★(5つ星)
 ドイツでデュエル王に輝いたのが分かる出来。このレベルの相手に対して、鋭い読みと寄せ、見事な身体のぶつけ方、ボールを取られないキープも見せてくれた。非常に良かったと思う。まさに「日本の心臓」という感じだった。

■田中 碧(デュッセルドルフ)=★★★☆☆(3つ星)
→後半26分OUT
 チーム全体でボールの取りどころがなく、機能不全に陥った。キミッヒとギュンドアンをケアしつつ、厳しく寄せられる場面が少なかった。ただし、これはチームの問題でもある。あれだけ目まぐるしくパス交換され、ポジションチェンジもされたら後手を踏むのも当然。それでも攻守でより存在感を示したかった。田中と久保はこの日物足りなかった。

■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★★(5つ星)
 前半は、オフサイドになったものの前田へのラストパスは完璧だった。わずかに前田が出ていたが、形としては申し分なかったし、伊東の良さも発揮された場面。前を向いて仕掛けると本当に怖い存在。相手サイドバックとセンターバックのところを上手く突いて迷いを生じさせていた。それにより相手のウイークポイントが見えたし、あぶり出したのは伊東の突破だった。

■鎌田大地(フランクフルト)=★★★★☆(4つ星)
 前半は見せ場が少なく、持ち味を発揮できる展開ではなかった。後半にボランチへ回って、クラブでも起用されているポジションということもあり、すんなりとプレーしていた。やはり鎌田のところで可能性を感じさせてくれる。本来はもっと攻撃に絡む姿を見たいところだが、昨日の展開だとやれることは限られる。コンディション的には非常に良さそうで、今後に期待は高まる。

■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★☆☆(3つ星)
→ハーフタイムOUT
 なかなか難しい展開だった。ドリブルしても寄せられ、ボールを奪われていた。キープ力を駆使し、そこに鎌田や長友が絡めれば良かったが、その場面は少なかった。それでもシュートやクロスからチャンスを作ってほしかったと思うし、それができるだけの選手。この日は目立ったプレーもなく、能力も発揮できないまま交代した。

<FW>
■前田大然(セルティック)=★★★★☆(4つ星)
→後半12分OUT
 激しいアップダウンを繰り返し、前線からボールを追っていた。相手キーパーにボールを戻されて追うだけになっていたが、その追う行為がボディーブローのように利いていたように思う。結果的に後半、相手の勢いと運動量が落ちていた。ただし、うしろからの連動性は改善点。

「日本の歴史を変えた」浅野、「チームを救った」堂安を高く評価

<途中出場>
■冨安健洋(アーセナル)=★★★★☆(4つ星)
←ハーフタイムIN
 まだ足の状態が万全ではないのかもしれないが、やっぱりピッチにいるとチームがぐっと安定する。崩される気がしない。攻撃参加もできるし、的確な守備も際立つ。このパフォーマンスで90分出場していたら文句なしに5つ星にしていた。

■堂安 律(フライブルク)=★★★★★(5つ星)
←後半26分IN
 南野のシュートをノイアーが弾いて、そのこぼれ球を逃さずにきっちりと詰めた。精度の高い左足でチームを救った形。キープ力もさすがで、時間を稼ぎながらしっかり時間を作ってくれた。守備でも貢献。伊東とポジションを変えながらバランスを取っていた。

■浅野拓磨(ボーフム)=★★★★★(5つ星)
←後半12分IN
 キープ力や突破力が光り、あの勝ち越し弾は値千金だった。あの角度のないコースから、ノイアーが待ち構えるなかで叩き込んだシュートは壮観。名手が防げない一撃で日本に歓喜を呼び込んだ。日本の歴史を変えてみせた。文句なしの最高点で、5つ星の中でも権田と双璧をなす貢献度の高さ。

■南野拓実(ASモナコ)=★★★★☆(4つ星)
←後半30分IN
 同点ゴールを呼び込んだ際のシュートのキレが光った。角度があまりないところから放ったいいシュートで、あれがなければゴールは生まれていない。三笘の前のスペースをケアするディフェンもしっかりこなし、かなり走っていた。最近結果を残せず、秘めた思いがあったように思う。その反骨心は強いメンタルの現れ。

■三笘 薫(ブライトン)=★★★★☆(4つ星)
←後半12分IN
 リズムを作ってくれた。彼のキープ力によって相手もうかつに飛び込めず、効果的なパスを南野に通して、その流れから堂安の同点ゴールが生まれた。守備でもしっかり貢献した。本来はもっとできる。決定的なシュートや鋭い切り込みは次回に期待したい。(金田喜稔 / Nobutoshi Kaneda)