カタール・ワールドカップで、日本代表は初戦でドイツ代表相手に2-1の逆転勝利を収めた。一気に話題が沸騰しているが、この勝利にはさまざまな情報と意味が込められている。歓喜がもたらされた理由と今後への影響について、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が熱戦直後の現地で激論を交わした。

■第2戦の修正点

――コスタリカ代表に確実に勝つために必要な修正点は何ですか。

後藤「僕はドイツ戦と同じ考え方で、前からがんがんプレスに行くべきだと思う。後ろからビルドアップしてパスをつないでいこうとすると、コスタリカの守備の網に引っかかっちゃう。前からどんどんプレスをかけてボールを奪って、ポンと決めちゃうのが一番」

大住「だから、前線には前田大然が欲しいよね」

後藤「そうそう。浅野拓磨があれだけ頑張ったんだから、前田にも頑張ってほしい。あとは負傷を抱えている人はもう少し休ませるといった判断はチームとして下すだろうから、ある程度はあるかもしれないけど、そんなに顔ぶれは変えない方がいいと思う」

大住「そうだよね。ただ、ドイツ戦の前半のような低調なプレーがなぜ起きたのかはちゃんと分析して対処していかないといけないよね。前でプレスがかからなくなったら、すべてのプレーがうまくいかなくなる」

後藤「反省材料と課題がはっきりした部分もあるという意味でも、良い大会初戦だったかもしれないですね。本当に分かりやすい試合でしたもんね」

■まだベストゲームをしなくていい

――森保一監督が率いるチームですから、慢心もないでしょう

後藤「ドイツに3-0で勝っていたらそうなるかもしれないけど、前半のやられ方を見たら慢心なんてできないよ。よくシュートを外してくれました、という試合だった」

大住「後半にもそういう場面はあったよね。ポストをかすめたシュートも1本あったしね」

後藤「そうそう。イルカイ・ギュンドアンはPKを決めたけど、シュートは結構打ったものの入らなかったしね」

――そう考えると、いろいろな意味で理想的な試合になりましたね。

後藤「逆転勝ちというのは勢いにも乗るしね」

大住「これ以上ない、みたいな試合をやっちゃったら、次は困るし、コロッと負けてしまうかもしれない。サッカーにはよくあることだし」

後藤「じゃあ、このドイツ戦以上の試合は大会4戦目のラウンド16にとっておこう。コスタリカ戦では守備が復活するだけでいいよ」

大住「そうすれば、勝点3だよ」

■応援される「ニッポン」

――まさに勢いに乗っていますね。

大住「帰りの地下鉄で、現地の人なのか、アラブ系らしき人たちが“ニッポン、ニッポン”と大騒ぎだったよ。駅で降りても、皆から“おめでとう、おめでとう”って言われるんだよね」

後藤「日本人以外でも日本代表のユニフォームを着ている人は多いし、日の丸を持っている人が多いのはうれしいよね。中東の人は、同じアジアの中で一番強いチームだから応援しようという気持ちもあるだろうし、ヨーロッパの人も日本が良いチームだと思ってくれる人が多いから、青いユニフォームを着ている人はいっぱいいるよ。

 だってさ、この試合でイエローカードは1枚も出なかったんだよ。ワールドカップの試合では、あり得ないフェアプレーだよ。サウジアラビア代表はアルゼンチン代表に勝ったけど、イエローカードを6枚出されていた。対戦相手のドイツもそういうチームだったからだけど、これは素晴らしいことだと思う。ロッカールームを掃除するよりも、すごいことだと思う」

――今回の試合を見た人は、ファンになると思います。

大住「それが一番大きいかな。日本でもワールドカップに興味を持ってくれる人が、一気に増えると思うんだよね」