【専門家の目|佐藤寿人】クロアチアは「世代交代を進めながらチームを強化できた」

 森保一監督率いる日本代表は、現地時間12月1日のカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第3節でスペイン代表と対戦し、2-1の逆転勝利でグループ首位通過を決めた。決勝トーナメント1回戦で対戦するクロアチア代表の試合を現地で見てきた元日本代表FW佐藤寿人氏に、その強みと現時点で考えられる対策を聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 クロアチアはベルギー代表、モロッコ代表、カナダ代表とグループFで同居し、1勝2分でモロッコに続く2位通過を決めた。W杯での日本との対戦は2006年のドイツW杯以来で、3度目となる。

 前回大会準優勝の強豪だけに、そのクオリティーは折り紙付き。佐藤氏も「ベルギー戦はスタジアムで解説させてもらって、カナダ戦もスタジアムで視察しましたが、やはり質の高さを感じました」と語り、その特徴を解説した。

「システム上は4-1-2-3で、(マルセロ・)ブロゾビッチがアンカーで、その前に(ルカ・)モドリッチと(マテオ・)コバチッチがいる。前線には突出したストライカーがいるというわけではないですが、ボックスで仕事ができる(マルコ・)リヴァヤがいますし、(アンドレイ・)クラマリッチはサイドから中に入っていくことができて、左には(イバン・)ペリシッチがいる。

 特にすごいなと思ったのが、世代交代を押し進めながらチームを作って、ベルギーがいるなかでグループリーグを突破したこと。ベルギーは前回大会3位で、クロアチアは準優勝ですよね。クロアチアは前回大会から残っている選手が8人で、ベルギーが16人も残っていました。世代交代を進めながらチームを強化できたのがクロアチア。本当に手強いと思います」

 その新世代の象徴的な存在が、センターバック(CB)を務める背番号20のDFヨシュコ・グバルディオルだ。守備だけでなく、攻撃でも重要な役割を果たすことができると、佐藤氏は警戒する。

「本当に素晴らしい選手です。彼の壁をどう打ち破るかも大事ですし、ビルドアップでは結構、前に持ち運んできます。そこで釣り出されてしまうと、日本も非常に難しくなると思います」

森保ジャパンの対抗策は? ベルギー戦ではモドリッチが孤立する場面も

 では、森保ジャパンはどう対峙すべきなのか。「ボールを持つか持たれるで言うと、持たれると思います」との前提のもと、攻守のポイントを分析した。

「ベルギーはコバチッチのところをだいぶケアして消していたので、モドリッチが孤立する場面もありました。相手の(パスの)供給源を消すことは間違いなく大事になりますし、アンカーのブロゾビッチの両脇でいかにボールを受けられるか。CBが前への強さを持っていますし、最終的にボックス内ではね返す、スペースを埋めるところが非常にいい。

 右サイドバック(SB)の(ヨシプ・)ユラノビッチは守備で多少センターバックとの距離感があるので、そこがもしかしたら狙い目かなとは思います。ただ、攻撃では高いポジションを取ってくるので、サイドでどちらが高いポジションを取れるか。日本がどういうシステムで、どういう左サイドの配置をしていくのか。三笘(薫)を先発で使うのか、切り札として使うのか。そこも含めて、森保監督の采配を見守りたいですね」

 森保ジャパンはここまでの3試合ですべて違うメンバーを起用し、スペイン戦では試合開始から3バックを採用するなど、様々な顔を見せてきた。佐藤氏は「誰を先発で使っていくのかも含めて、この3試合を見て、90分でいかにゲームをするかのプランだと思います」として、旧知の森保監督が振るう手腕に改めて注目している。

「ここまでいろいろな選択肢があるなかで、『こういう選択肢を取るんだな』というのが見えてきました。次にどういう形を取るのかなと、考えながら試合を見ていきたいと思います。クロアチア戦でも『あ、そんなことするんだ』とか、『あ、森保さんらしくないな』と思う瞬間も来るかもしれません。全ては勝つための判断だと思いますし、その判断がスペイン戦のように勝利につながることを願うしかない。ここまできたら、もう応援するしかないですね」

 ドイツ戦とスペイン戦では、大胆な策が実って格上を撃破した。“まだ見ぬ景色”のベスト8進出に向けて、指揮官の采配が再び冴えわたることに期待したい。(FOOTBALL ZONE編集部)