森保ジャパンはトレンドの波に乗る

今回のFIFAワールドカップ・カタール大会のキーワードの1つとなっているのがフィジカルだ。トップレベルの選手たちが魅せるテクニックも見事ではあるが、それ以上にフィジカルの部分が目立っている。

そのトレンドの象徴とも言えるのが日本代表だろう。テクニシャンを揃えるドイツ、スペインを華麗な堅守速攻で撃破しており、日本の選手たちは最後まで足を止めない。過去の日本代表よりもスピード、運動量、パワー、高さ、守備力といった部分が間違いなく向上しており、フィジカルで他国に後れを取る機会はほとんどない。

かつてリヴァプールなどで活躍し、英『BBC』で解説を務めるダニー・マーフィー氏も日本を含む格下チームが起こすフィジカル重視のサプライズに注目している。

「今大会ではテクニックだけでなく、体力や身体能力が勝負を決める要素になっているのは明らかだ。それがグループステージで多くのサプライズが起きた主な理由の1つだ。もちろん番狂わせを起こしたチームにも技術力はあったが。日本がドイツとスペインを撃破したゲームやサウジアラビアがアルゼンチンを撃破したゲームなど、フィジカルは下馬評を覆すのに役立った」

「通常はよりテクニックのあるチームがゲームの終盤へかけて相手を走らせて擦り減らし、相手が疲れてくるとスペースが出来てくる。だが、カタールでは違う。格下がサプライズを起こす瞬間が後半にきている。3人から5人に交代枠が増えたことは間違いなく効果を発揮しているね。個人的には5人交代制は好きだし、現代の試合数とインテンシティを考えるれば妥当なルールだと思うよ」

同氏の言葉通り5人交代制は大きい。攻撃の流れを変えることはもちろん、疲労の溜まった選手も交代させやすい。そのぶんスタメン組がスタミナを気にせず走り回ることも可能となり、圧倒的な運動量で強豪を苦しめやすい環境にはなっている。

今大会を機にトレンドが変わっていく可能性もあり、また1つフットボールは進化する。その波に乗っているのが日本代表であり、やはり格上を撃破するうえで運動量やデュエルの強さは重要だ。トレンドを考えれば、ベスト16まで進んだのも偶然ではないと言える。