相次いで強豪を沈めて勝ち上がった自信と勢いや、采配が的中している指揮官の手腕、途中出場選手が試合を変えてきた層の厚さは、日本代表の武器となる。
一方で、歴史的な勝利を収めてきた満足感や、少しずつ増していく重圧は、森保一監督率いるサムライブルーの足かせとなるかもしれない。何より、前回大会の準優勝国との間に差があることは否めないだろう。
12月5日、日本はカタール・ワールドカップのラウンド16でクロアチアと対戦する。試合を翌日に控えた4日、イタリア紙『Il Giornale』は日本の躍進を称賛しつつ、森保ジャパンにとって強み・弱みを分析した。
同紙は「日本が初優勝できると言えるにはほど遠い。だが、完全にあり得ないことでもない。世界レベルのスターはいないが、大半の選手がプレーしており、日本がまだサッカー界を驚かせることはできるかもしれない」と、ドイツやスペインを下してきた日本の力をたたえている。
特に「モリヤスは魔術師だ。ソフトだとか、カリスマ性がないとか、日本ではしばしば大きな批判を浴びせられた。だが、『日本のサウスゲイト』はここまで何も間違わなかった」と、森保監督の手腕に賛辞を寄せた。
「試合へのプランは危険に、ほとんど自殺行為に思われた。明らかにより強いチームを相手に、前半を譲ったからだ。守って試合に踏みとどまり、後半からギアを入れる。スペインとドイツには機能した。クロアチア戦でもまたそれをやるだろうか?」
もちろん、ドイツ戦とスペイン戦で試合をひっくり返したのは、同点弾を決めた堂安律をはじめ ベンチスタートから途中出場で結果を残した選手たちの活躍が大きかった。
『Il Giornale』紙は「センセーショナルな逆転劇の土台にあるのは、素晴らしいレベルの途中出場選手たち。違いをつくったのは、相手が試合は終わったと思ったときにモリヤスが投入したドウアンやミトマ、アサノ、ミナミノといった選手たちだ」と続けている。
「ベンチの層の厚さは、3試合でスタメンが10人同じだったクロアチアのようなチームとの対戦で違いとなるかもしれない。特に高齢の選手たちがいなくなってから、途中出場選手のダイナミズムが勝利の切り札になる可能性はある」
また、同紙は「日本の真の強みは、長時間にわたって多くを許さず苦しみに耐えられる守備」としたうえで、「出場時間がかさんでいく中で、代わりの選手は高いレベルになさそうだ」と指摘した。
「ルカ・モドリッチ、イバン・ペリシッチ、マテオ・コバチッチにスペースを与えすぎるのは、非常に大きな代償となりかねない。ときに無秩序なタレント抑えるために、モリヤスがまた何かを思いつくか見てみよう」
大会前は、日本がドイツやスペインと同組のグループEを突破するのは難しいとの見方が優勢だった。それは裏返せば、プレッシャーを感じることなく戦えたとも言える。
『Il Giornale』紙は「矛盾するようだが、アジアサッカー最高の結果を2つ残したことによる満足感は、日本にとって不利となるかもしれない」と評した。
「醜態をさらさらないことが第一だったが、サムライブルーはすでに祝福されて帰国できるだけのことをした。一方で、日本スポーツ界はもう、出るだけでは満足しない。メディアは他スポーツにおける日本人の偉業を激賞している。世界レベルで支配することが、もうタブーではないのだ。ここまで理想的な状態でいられたドレッシングルームに、ある種のナーバスさが忍び込むかもしれない」
確かなのは、日本が成長を遂げたことだ。同紙は「笑うことなく、日本が世界王者になるのを想像できるか? おそらくはノーだ。だがもう、スポーツにおけるアジア勢の快挙はマンガのヒーローの夢だけのものと思われていた30~40年前と違い、珍説とはならないだろう」と続けている。
「彼らに世界レベルの最高級選手はいないだろう。だが、日本の選手の平均レベルは、20年前に母国で開催したワールドカップから大きく成長した」
その成長の証が、日本史上初の2大会連続決勝トーナメント進出だ。次のステップは、「ベスト16の壁」を越えること。森保ジャパンは、史上初のベスト8進出で歴史を変えることができるか。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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