【専門家の目|栗原勇蔵】「蹴りたい人」に蹴らすのではなく、綿密なアプローチをすべき

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、現地時間12月5日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表(同12位)と対戦し、120分間で1-1のまま決着が付かず、PK戦に突入してPKスコア1-3で敗れた。目標とする初のベスト8にまたもあと一歩手が届かなかったなか、元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「PK戦は運だけでは片づけられない」と持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 初のベスト8進出を目指した日本は、グループリーグ第3戦スペイン戦と同じく3バックでスタート。1トップのFW前田大然(セルティック)を中心に積極的にプレスを仕掛けるとともに、最終ラインから攻撃へとつないでいく形が増えていった。

 そのなかで日本は前半43分、右コーナーキックからショートでつなぎ、MF堂安律(フライブルク)が角度を作った状態から中央へクロス。そのこぼれ球を前田が蹴り込んで先制点を奪い、1-0でハーフタイムを迎えた。

 交代なしで突入した後半の10分、クロアチアはDFデヤン・ロブレンが右サイドの敵陣中央から右足でクロスを上げると、ペナルティーエリア中央で反応したMFイバン・ペリシッチが頭で合わせ、日本は同点に追い付かれてしまった。

 1-1のまま延長戦に突入したなか、前半、後半の30分間でもスコアは動かず試合はPK戦へ。先攻の日本は1人目のMF南野拓実(ASモナコ)、MF三笘薫(ブライトン)が立て続けに失敗。対するクロアチアは2人とも成功させてリードを奪う。日本は3人目のFW浅野拓磨(ボーフム)が決め、クロアチアは3人目のMFマルコ・リヴァヤのシュートが左ポスト直撃。しかし、日本は4人目のDF吉田麻也(シャルケ)が止められてあとがなくなり、クロアチアの4人目が決めて勝負は決した。

 2010年の南アフリカW杯決勝トーナメント1回戦パラグアイ戦同様、PK戦の末にベスト16敗退となった日本。元日本代表FW栗原氏は「120分間はよく戦っていた」と前置きしたうえで、PK戦に関しては厳しい言葉を残している。

「1つ言えるのは、PKはよく運だと言いますけど、運だけでは片づけられない。誰を責めるものでもないですけど、日本は完全にクロアチアのGKに引き込まれていた。自分のリズムが乱れていた感じですね」

 ボランチのMF遠藤航(シュツットガルト)は試合後のフラッシュインタビューで、PKキッカーは「蹴りたい人が蹴っていく感じ」だったことを明かしていた。コンディションや出場しているメンバーなどそれまでの過程もあるとはいえ、栗原氏は「実際、ベスト16で壁があるのだから、メンタル面を含めて綿密にキッカーを決めておいても良かった。ここで上(ベスト8)に上がれるのと上がれないのとでは雲泥の差」と見解を述べる。

「正直、(1人目の)南野は助走とかも見て、外す感じがしました。審判が笛を吹いてからの流れも慌てていたというか、そんなに早く短い助走で蹴っちゃうの、と。相手GKをしっかり見れば、簡単に逆を突けそうなのに、吸い込まれるように蹴っていたと思います。そして、南野が外したことで、三笘には『また外したらマズい』というプレッシャーもあったはずです」

 森保ジャパンの旅路は、ベスト16で奇しくも終わりを迎えた。次なる世界への挑戦は4年後。それまでに日本は、ベスト8の壁を打ち破る力をつけることが望まれる。(FOOTBALL ZONE編集部)