【識者コラム】今冬に新天地へ活躍を求めた注目のストライカー7人を紹介

 2023シーズンに向けてJリーグの移籍市場が活性化している。今冬に新天地へ活躍を求めた選手の中から、ここではJ1リーグのストライカーに絞って、注目の新加入選手をピックアップ。なお、ここでは既出コラム(J1リーグ注目すべき「7つの移籍」)で取り上げたFWパトリック(ガンバ大阪→京都サンガF.C.)とFW仲川輝人(横浜F・マリノス→FC東京)は対象外としている。

■瀬川祐輔(川崎フロンターレ←湘南ベルマーレ)
昨季リーグ成績(J1):32試合3得点

 湘南では主にFW町野修斗と2トップを組み、時間帯によっては2列目を担うなど、攻守のハードワークとアクセントの効いたチャンスメイク、スペースメイクなどでJ1残留に貢献した。ただ、なかなかゴールやアシストという目に見える結果が付かず、本人も試合に出ながら「これだけ結果が出ないシーズンは初めて」と思い悩むことも。

 新天地の川崎はパスの出し手に事欠かないだけに、よりフィニッシャーの仕事に集中できれば結果は付いてくるはず。あとはポジションがセンターフォワードになるのか、それともウイングになるのか。2トップ採用ならよりハマりやすいが、外のレーンを支えるサイドバックと縦関係を組むなら、ウイングから中に入っていく動きが生きる。

■知念 慶(鹿島アントラーズ←川崎フロンターレ)
昨季リーグ成績(J1):27試合7得点

 川崎では一時チームを離れたが、3度のJリーグ制覇を経験しておりここ数年、無冠が続く鹿島に新たな推進力と勝負強さをもたらせる強力なピースだ。ここ2シーズンはウイングでも起用されたが、やはり本領を発揮しやすいのはゴール前だ。鹿島は岩政大樹監督になってからも2トップがベースなので、ピンポイントのクロスに合わせたり、最短距離でゴールに向かったりする特長は発揮しやすい。

 期待したいのはFW鈴木優磨とのコンビで、幅広く動き回る鈴木とボールのないところでも相手のディフェンスと駆け引きしながら待てる知念という組み合わせは理想的だ。27歳という年齢ではあるが、継続的に起用されながら周囲との関係を確立できれば、2019年のリーグ戦5得点というキャリアハイを大幅に超える二桁ゴールも十分に狙える。

■髙橋利樹(浦和レッズ←ロアッソ熊本)
昨季リーグ成績(J2):40試合14得点

 埼玉出身のストライカーは昨シーズンのJ2で14得点。それまでJ3の2シーズン合わせて17得点だったことを考えれば、飛躍的な成長を遂げたと言える。その理由は大木武監督が指揮する熊本で、髙橋に良い形でラストパスが出てくる関係を味方と築いたこともあるが、動き出しの質が飛躍的に向上したことも大きいだろう。

 元々182センチのサイズと跳躍力を活かしたヘディングの得点力は高かった。そこに北海道コンサドーレ札幌から浦和に復帰が決まったFW興梠慎三を参考にしたという動き出しが加わり、フィニッシュのバリエーションが増えた。精力的なディフェンスやポストプレーはハイスタンダードで、おそらくJ1でも通用する。あとはゴール前でどれだけ決定的な仕事ができるか。マシエイ・スコルツァ新監督が4-2-3-1をベースにする場合は、憧れの興梠とライバルになるが、縦の2トップで並び立つこともあるかもしれない。

FC東京で鳴りを潜めた山下は、得点力アップがノルマの湘南へ

■山下敬大(湘南ベルマーレ←FC東京)
昨季リーグ成績(J1):15試合0得点

 福岡産の大型ストライカーはJ2のレノファ山口FCで大卒2年目(2018年)に11得点とブレイク。そこからジェフユナイテッド千葉、J1のサガン鳥栖で経験を積み、さらなる飛躍を期したFC東京では、期待された得点力がすっかり鳴りを潜めてしまった。新天地は上位躍進のために得点力アップがノルマとなる湘南だ。

 カタール・ワールドカップ(W杯)メンバーだったFW町野修斗の残留がリリースされたが、山口智監督は3-5-2をベースにするため、町野との“ツインタワー”も考えられる。もっとも184センチのサイズこそあるが、山口では2列目やウイングでも起用されており、最前線に張り続けるタイプではない。ただ、あくまでストライカーなので、フィニッシュの時にボックス内で勝負できるメカニズムをチームで作っていくことが得点量産の鍵になる。

■佐藤凌我(アビスパ福岡←東京ヴェルディ)
昨季リーグ成績(J2):40試合13得点

 大卒から2シーズン連続13得点と目を見張る結果を残してきた。福岡市生まれで、名門・東福岡出身。故郷に錦を飾る形で地元クラブに加入することとなった。179センチと特別大柄なわけではないが、一瞬の動きでマークを外せるレスポンスと点で合わせるセンスを持っている。

 ボックス内で勝負するタイプでありながら、ミドルレンジで決め切るシュート力も備える。福岡は長谷部茂利監督が4-4-2を継続的に使っており、10得点をマークしたFW山岸祐也などとのコンビで、さらに得点感覚を発揮できるかもしれない。

■太田修介(アルビレックス新潟←FC町田ゼルビア)
昨季リーグ成績(J2):40試合11得点

 日体大からアカデミー時代を過ごしたJ2ヴァンフォーレ甲府に加入し、一昨年に移籍した町田でさらに得点力を開花させた。俊敏性があり、サイドハーフやセカンドトップもこなせる前線のスーパーマルチであり松橋力蔵監督の下、豊富な攻撃オプションを準備する新潟に合っている。

 昨シーズンは11ゴールを決めつつ、7アシストをマーク。これは大きなアピールポイントだろう。J1昇格を決めたチームは攻撃的なポジションの選手層が厚い。1人のエースストライカーに頼るようなチームではないので、太田も周囲のアタッカーを生かし、また生かされながら結果を残すことで、主力としての位置付けも見えてきそうだ。

■横山歩夢(サガン鳥栖←松本山雅FC)
昨季リーグ成績(J3):29試合11得点

 2022シーズンは高卒2年目でJ3ながら11得点をマークした。U-19日本代表にも選ばれて、エース級の活躍を見せている。独力で打開できるドリブルと俊足を生かしたラインブレイク、さらに高確率で枠をとらえるシュート力もある。

 松本ではボールを持てばどんどん仕掛けてシュートに持ち込んでいたが、新天地ではJ1ということもあり、さらに周りと絡みながらコンビネーションを引き出したり、合わせる動きも求められてくる。

 来年はU-20W杯なども控えており、代表活動でチームを離れることもあるかもしれないが、U-19代表のキャプテンであるDF中野伸哉などと相乗効果で成長していければ、鳥栖から世界に羽ばたくタレントの1人になっていけるポテンシャルは十二分だ。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)