W杯でもフリーキックはほとんど話題にならなかった

1大会最多となる172のゴールが生まれ、大いに盛り上がったFIFAワールドカップ・カタール大会。これまで以上に素早い攻守の切り替え、5枚の交代枠を活かしたハイテンポなフットボールなどスピーディーな試合が多かった一方で、少なかったのが直接フリーキックによるゴールだ。

今大会で生まれた直接フリーキックのゴールは、モロッコ代表MFアブデルハミド・サビリ(対ベルギー)、イングランド代表FWマーカス・ラッシュフォード(対ウェールズ)、メキシコ代表DFルイス・チャベス(対サウジアラビア)が決めた3発となっており、フリーキックが話題に上がる機会はあまり多くなかった印象だ。

伊『Gazzetta dello Sport』はかつてのジュニーニョ・ペルナンブカーノ、デイビッド・ベッカム、アレッサンドロ・デル・ピエロ、ジャンフランコ・ゾラ、アンドレア・ピルロといった名手が現代に見当たらないと指摘。スピードやパワーなど身体能力の向上が著しい一方で、キック精度など技術的な部分のトレーニングが疎かになっているのではとも推察している。

確かに現代サッカーは展開がかなり速くなっており、いわゆる10番タイプの司令塔やファンタジスタと呼べるテクニシャンは減少傾向にある。それは日本代表も同じかもしれない。以前の代表には遠藤保仁、中村俊輔などキックの名手がおり、コーナーキックやフリーキックは貴重な得点源だった。しかし、今の日本代表に中村俊輔ほどのキック精度を持つプレイヤーは見当たらない。

伊東純也、三笘薫など個の能力で仕掛けられるアタッカーや、遠藤航のように守備のデュエルで海外の屈強なアタッカーと戦える選手は増えているが、時代の流れに合わせるように司令塔タイプは少なくなっている。

一部では今回のFIFAワールドカップ・カタール大会で採用されたボールが軽すぎるとの指摘もあるようだが、同メディアは言い訳とバッサリ。やはりフリーキックは普段のトレーニングからの積み重ねが大事になるはずで、過去の名手たちも自分の得意なコースを習得するまで蹴り続けたことだろう。ジムでのトレーニングなどフィジカル面の向上が進む一方で、こうしたボールを蹴り続ける地道なトレーニングに割く時間が少なくなっているところはあるかもしれない。

日本としてもセットプレイからの得点数を増やすのは課題の1つで、今のところはキッカーが固定されていない。4年後へ向けて高精度のキックを持つ選手も欲しいところだが、中村俊輔や遠藤保仁級のキックの持ち主は現れるだろうか。