カタール・ワールドカップのアジア最終予選で日本代表の大きな武器となっていたのが、伊東純也と三笘薫のドリブル突破だ。伊東は4ゴール・2アシストとエースの働きを見せ、三笘も途中出場した2試合で2ゴール・1アシストの大活躍だった。
 
 しかし、6月6日のブラジル代表戦(キリンチャレンジカップ)で日本代表は、いわば現実を突き尽きられた。
 
 右ウイングで先発した伊東は、対面した相手の左SBギリェルメ・アラーナの良い距離感の守りに苦戦。1対1を何度か仕掛けたが、クロスはブロックされ続ける。そして、時間の経過とともにドリブルを狙う場面が減っていった。
 
 一方、73分から途中出場して左ウイングに入った三笘も、その3分前にCBから右SBに移っていたエデル・ミリトンに封殺される。1対1のドリブルは二度に渡って完璧に潰された。
 
 三笘はスタメン出場した6月2日のパラグアイ代表(同じくキリンチャレンジカップ)で面白いようにドリブル突破を成功させて1ゴールも記録していたが、世界最高レベルのレアル・マドリーとブラジル代表で活躍するE・ミリトンはやはり手強かった。試合後に本人もこう認めている。
 
「自分のドリブルがどれだけ通用するか試したかったですけど、2本くらい止められた。ミリトンはスピードがあるのは分かっていたし、自分はフレッシュな状態で、相手が疲れている中でも対応されてしまった。ああ、まだそういう実力だなと改めて分かりました。まだまだ差は大きい」
 
 アジア最終予選の日本代表は、アイソレーション(片側のサイドに人を密集させて敵をおびき寄せ、手薄な逆サイドにサイドチェンジ)から、伊東と三笘に1対1のドリブルを仕掛けさせる形を重要な攻撃パターンとしていた。しかし、ブラジル代表には2人の単独突破がほぼ通用せず。同じく優勝候補の一角であるドイツ代表、スペイン代表とグループリーグで戦うカタール・ワールドカップでも、同じ困難に陥る可能性は極めて高い。
 
 いわば両翼をもがれる格好になる日本代表だが、単純な1対1で突破できないとなれば連携を使うしか手はない。三笘が「仕掛けるところと、パスするところの判断をうまく使い分けないといけない」と語れば、さらにブラジル戦は右SBで先発出場した長友佑都も次のように語った。
 
「ミリトンの守備は世界レベルの強度だった。でも、味方がフリーランニングしたり近くで良いポジションを取ったりして引き付ければ、純也と薫はもっと良い形で1対1ができると思う。サポートのいる状態なら剥がせるかもしれない」
 
 実際にこの日の長友は、伊東の周辺でオーバーラップやインナーラップを何度か見せ、二度ほどチャンスに繋げていた。
 
 世界レベルとの対戦が続くカタール・ワールドカップで日本代表は、やはり「個」ではなく「組織」で対抗するしかない——。ブラジル代表との強化試合は、その現実を改めて痛感させられるゲームとなった。
 
取材・文●白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

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