[キリンカップサッカー]日本 4-1 ガーナ/6月10日/ノエビアスタジアム神戸

 森保一監督は6月シリーズ、カタール・ワールドカップ本番を想定して「中3日でのコンディション調整を意識してメンバーを代えながら」と話した。事実上、ガーナ戦は最終試験に近い意味合いがあったはずだ。

 本番の登録選手数が26人なら、現在選ばれている大半の選手たちがカタール行きの切符を手にする。しかしW杯のグループステージで強豪のドイツ、スペインと同居したことを踏まえれば、攻撃的なオプションが必要になるのは大陸間プレーオフのコスタリカ(北中米)対ニュージーランド(オセアニア)の勝者と戦う2戦目だけで、実際にピッチに立てる選手は限られる。

 森保監督はベースを4-3-3と明言しており、あくまでガーナ戦終盤に試した3バックはオプションにすぎない。また、これまでの指揮官の采配を見れば、重圧のかかる本番で臨機応変の戦術変更が実践されるとも思えない。
 
 あくまでベースで戦い抜くことを基調に考えれば、決断を先送りにしているのはセンターフォワードと左サイドの人選で、たぶんほかのポジションのスタメン構想は、故障者が出ない限り動かない。そういう意味で、ガーナ戦の久保建英と柴崎岳のインサイドハーフでの先発起用は、いかにも同監督らしく、労いの意図が透けて見えた。

 残念ながら来日するアフリカの代表チームはコンディション不良のケースが多く、ガーナ戦も手ごたえが乏し過ぎて大きな参考にはならない。しかし、それでも左サイドとセンターフォワードは、序列変動の可能性を示唆した。

 まず三笘薫は6日のブラジル戦終盤、72分からの起用で課題を露呈したが、マッチアップした相手がレアル・マドリーでプレーする天下のエデル・ミリトンなので、大きな減点にはならない。最大の利点は、ガーナ戦でも久保のゴールを導いたエリア内で縦に切り裂くドリブルだが、逆に相手がそれを警戒して構えれば、前半終了間際にクロスが直接ネットを揺らしたチームの2点目のような形もある。

 前線に駿足選手を揃えていれば、なお有効になる。もともと左ウイングは、第一選択の南野拓実にとって適性ポジションではなかったので、むしろ三笘が最適なのは衆目の一致するところだ。
 
 左サイドバックで起用された伊藤洋輝も、同ポジションのライバル候補たちにはない高さと、レフティとして際立ったキックの精度もある。特に本番のグループステージ初戦のドイツ戦を考えれば、フィジカルでも競い合える特長が希少価値を持つ。

 また伊藤浮上の背景には、負傷しがちな酒井宏樹のコンディションもある。右サイドバックで二番手の山根視来は攻撃的な特長が顕著なので、W杯で同じグループの二強相手には起用し難い。それだけに今回、怪我で途中離脱した菅原由勢を最終テストに呼べなかったのは、微妙な痛手になったかもしれない。

 結局森保監督は、代表戦で初めて、本来左サイドバックの長友佑都を右に回したわけだが、そうなれば左は伊藤や、故障中の冨安健洋が競い合っても不思議はない。さらに左サイドの崩しが強化されクロスが入りやすくなれば、指揮官が「三笘との相性が良い」と考える上田の起用も浮上してくる可能性がある。今回と同様に本大会でも大迫勇也の招集を見送るのかは不明だが、最初に上田を抜擢し、評価し続けてきたのも森保監督だった。
 
 一方、中盤3人の構想は揺るぎない。格上に挑む試合で重視されるのは、あくまで攻守のバランスで、とりわけ守備面での強度は不可欠になる。久保のA代表初ゴールは待望のトピックだったかもしれないが、起用があるとすれば追いかける展開でのオプションに過ぎない。

 だがもし2ボランチにしてトップ下を配すなら、第一選択肢は鎌田大地になるはずなので、可能性は相当に狭まる。柴崎をメンバーに残したのも、W杯最終予選のサウジアラビア戦で失点につながったパスミスを契機に外したくない指揮官の想いが表れたもので、外国人監督ならすでに別の選択を求めていたはずだ。

 実際、現状で遠藤航、田中碧、守田英正のうち誰かが故障した場合、森保監督が控えの中で最も信頼を置くのは、攻守にハードワークができる原口元気だ。だがレギュラー陣と同傾向の能力を備えたMFを求めるなら、7月中旬から行なわれるE-1選手権で、安部柊斗らを筆頭とする国内組の検証を進めるべきかもしれない。

取材・文●加部 究(スポーツライター)

【キリンカップPHOTO】日本4ー1ガーナ|久保&前田がA代表初ゴール!4発快勝でチュニジアの待つ決勝の舞台へ