日本代表は、予想外の厳しい敗戦で6月シリーズの強化試合4連戦を終えた。

 最初の3試合で掴んだ好感触やぱっと見の確実性は、0-3の惨敗劇で消え去ってしまった。森保一監督の下で培っていたはずの強固とは言わないまでも組織的な守備は、吉田麻也がDFリーダーらしからぬ失点に絡むミスを連発しその脆さが浮き彫りとなった。

 皮肉で理解しがたいのは、日本はこのチュニジア戦において大敗という結果を別にすれば、4-1で大勝したパラグアイ戦と同じプレーをしたことだ。おまけに、今回のほうがベストメンバーに近かった。

 格下や同格相手の能動的に振る舞わなければならない試合において、森保ジャパンの攻撃はもっぱら大きな展開とサイドからの突破がメインになる。自ずとインサイドハーフの原口元気と鎌田大地が、縦パスを繰り出す機会は少なくなる。このチュニジア戦でもサイドに展開することと、ゴール前に走り込み味方の折り返しに合わせることが2人の主な仕事だった。

 実際、そのサイドからは左の南野拓実は沈黙気味だったとはいえ、右ウイングの伊東純也がクロスを送り込み続けた。しかし、日本はボックス内で特別なプレゼンスを発揮するフィニッシャーが不在のため、1トップの浅野拓磨を探すシーンは限られ、両インサイドハーフがその役割を担った。
 
 そうしたチームとしての攻撃の特徴は、堂安律のクロスを鎌田がヘッドで合わせた2点目、田中碧がミドルシュートを突き刺した4点目というパラグアイ戦でのゴールシーンを見ても明らかだ。

 チュニジア戦でも伊東からのクロスに鎌田がタイミングが合わずシュートミスをした35分のプレー、板倉滉の縦パスに抜け出した南野が左足でゴールに流し込みネットを揺らすも、オフサイド判定で取り消された41分のプレーという2つの絶好機が示すように攻撃の原理原則は同じだった。しかしパラグアイ戦でプラスに作用した攻撃パターンが今回は何の効果も生み出すことはなかった。

 理由は主に2つある。1つ目は、単純に相手チームが優れていたからだ。チュニジアはワールドカップ出場国に相応しい好チームだった。守備ブロックの構築やオフサイドトラップにおけるDFラインの連携性など戦術的にも細部までこだわっているところが随所に伺われ、その点では例えばパラグアイとは大きく異なっていた。

 2つ目は、その相手の堅い守備に対し、日本は完全に攻めあぐんでしまったことだ。森保監督が用意したレシピは同じだったが、出来上がった料理はパラグアイ戦よりも粗悪なものだったのだ。

 伊東が再三クロスを供給しても味方に合わず、先述した通り南野は冴えないパフォーマンスに終始。サイドバックの長友佑都と伊藤洋輝はともに攻撃面での存在感は希薄だった。
 日本の生命線を握るのはサイド攻撃だ。しかし依存度が高すぎる弊害で、その頼みの攻撃パターンが機能しなければ、途端に質も量も低下する。後半、森保監督は南野と久保建英が分担してトップ下を務める4-2-3-1のオプションを試したが、さしたる影響はなかった。むしろ三苫薫と堂安の投入でリフレッシュされたことで、サイド攻撃への固執は最後まで続いた。

 試合の主導権を握ったのは日本だった。しかし単調な攻撃に終始し、その優位性がチャンスの危険度に反映されることはなかった。無得点という結果はその産物だったわけだが、その攻撃面よりも問題視すべきは、3失点を喫したことだ。
 
 遠藤航がブラジル戦(0-1)で献上したPKは物議を醸すジャッジで、弁解の余地はあった。しかし、チュニジアの1点目に繋がった、吉田がタハ・ヤシン・ケニシを倒して与えたPKは弁解の余地のないものだった。本番のドイツ戦やスペイン戦では、決して許されない不用意なファウルだった。

 フェルジャニ・サシに2点目をプレゼントしたプレーは言わずもがなだ。冨安健洋がコンディション不良で出場を見合わせるなか、谷口彰悟、伊藤、板倉といった選手がミスをするのならまだ理解できる。そんな中、百戦錬磨のキャプテンが1度ならず2度までも失点に絡むミスを犯した。

 これがW杯でなかったことが救いだが、このチュニジア戦は4連戦のラストマッチだ。日本にとっては何とも後味の悪い結末となった。

文●ダビド・フェルナンデス(ラジオ・マルカ)
翻訳●下村正幸


【動画】「W杯本番では決して許されない」とスペイン人記者が糾弾した吉田麻也のプレー