日本代表は9月23日、ドイツのデュッセルドルフ・アレーナで行われたキリンチャレンジカップ2022でアメリカ代表と対戦。2-0で勝利を収めた。

先発出場の起用に応え後半23分まで出場、攻守に渡って貢献したのは背番号11のMF久保建英(レアル・ソシエダ)だ。立ち上がりから相手選手へしつこくプレスをかけ攻撃の目を摘むと、前半13分にはアメリカの前方を狙ったパスをすかさず読みカット。マイボールにするや否や味方へ展開、MF鎌田大地(フランクフルト)の決定機を演出している。さらに前半33分にはMF遠藤航(シュツットガルト)からパスを受けると、攻撃のスイッチを警戒した相手からFKを獲得。後半には利き足である左で正確なクロスを送るなど、随所に久保のセンスが光った。

幼いころから海外でのサッカー経験を重ね、FC東京でも多くの観客を魅了するなど、Jリーグにも名を刻んだ久保。再び欧州へと羽ばたいた彼も、気が付けば21歳と名実とも“大人”のフェーズを迎えている。そして、サッカー人生において一つの岐路に立たされていることは、これを読む多くの人が感じていることだろう。かつては「天才」ともてはやされた青年も、去る2022年6月、誕生日を迎えたばかりのキリンチャレンジカップでは、自身の初ゴールに「このまま一生入らないんじゃないかと思うこともあった」と試合後吐露したのだ。
 

年齢を考えれば浮き沈みも頷けるものだが、かつての彼は公で弱みを見せる印象が少なかった。FC東京在籍時も、10歳以上離れた先輩に物怖じしない口をきくなど、あどけなさの残る顔つきとは裏腹、当時から肝の座った一面を見せていた。そもそもいち早く海外サッカーで揉まれた彼ならば、国際Aマッチ通算17試合目まで自身がゴールネットを揺らせないなど考えてもいなかったのかもしれない。真相は本人のみぞ知るが、彼の“人間味”が出てきたことには良くも悪くも関心が向いていた。

それだけに、2022年FIFAワールドカップまであと2カ月弱となった今、“その久保が”日の丸をつけて堂々と戦っていることには期待が大きい。もちろん所属するレアル・ソシエダでも調子を上げてきていることも、本人の自信になっているのだろう。この日も得点こそ無いものの、チームの勝利に貢献したことは海外メディアでも称賛されている。

では、久保本人はどう感じているのだろう。試合後コメントに目を向けると「前半に相手が変則的な形で攻めてきて僕が守らないといけなかったので、自分としては不本意でした」と、本来の力が発揮できなかったことへ悔しさを見せていた。さらに「でもチームの勝利のために僕はひとつのピースでしかないので。満足というか、チームのためにがんばれたので良かったと思います」と、どこか大人びた感想を続けた。

そうは言っても、彼はまだ21歳でしかない。今回のアメリカ戦では、日本代表の先発11人が平均年齢27.5歳に対し、アメリカ代表のそれが23.8歳と相手の若さがフューチャーされたが、久保に限れば両チームの平均を裕に下回っている。怖いものなしかのようにピッチを駆け回っていたかつての彼と比較してしまう気持ちもわかるが、言うまでもなくプロサッカー人生は「まだまだこれから」なのだ。2022年FIFAワールドカップまであと50日余り。カタールの地で久保建英が人間臭く、ただ確かに躍動する姿を、日本中が期待している。
 

photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru