サッカー日本代表のカタール・ワールドカップに臨むメンバー発表前、最後の準備が終わった。今回のドイツ遠征では、得るものも多かった。これまでの歩みから浮かび上がってきたチームの現在地、そして本大会への展望をベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り尽くした。
■三笘はジョーカーとして活きる
――他の選手はどうでしたか。
大住「三笘薫は先発で出すよりも、やはり交代で出す方がいいと感じたよね。あれだけのものを持っている選手が最後の10、15分で出てきたら相手は嫌だと思う。試合展開によるけど、押し込む試合はなかなかないだろうし。自陣からドリブルしたところで、相手にとっては何も怖くない。三笘らしいプレーは前半最後の1本だけだったね」
後藤「もうすでに対戦相手にも結構、三笘のプレーはバレちゃっているからね」
大住「あれだけできるという選手を、たとえバレていてもサブに持っているというのは、結構すごいことなんだよね。三笘が出て着たら、相手は気にしてサイドバックを代えるかもしれない。そうなったら相手の切り札を1人使えなくなるかもしれない。それから、田中はちょっとさびが出ている感じはした。前のように研ぎ澄まされた感覚じゃなくて、ちょっと反応が遅いんだよね。田中にしろ、柴崎岳にしろ、試合に出ていない選手は大変なんだなと思った」
■オリンピックで学んだ一番の教訓
――他に気になった選手はいましたか。
大住「交代で出てきた選手は良いなと思ったね。鎌田大地もそうだし、相馬勇紀もすごく良かった。遠藤航が入ったり、吉田麻也が最終ラインに入ると全然雰囲気が違う。吉田はバタバタしないし、吸いつけられるようにボールが来るし。後藤さんが言っているように、中心選手を何人か残しておいて、ベンチスタートにして休ませておいた選手を残り20分くらいで使っていきながら、チーム全体が疲れ切らないようにする。これは森保一監督が東京オリンピックで学んだ一番の教訓かもしれないね」
後藤「吉田がもし疲れたていたら、冨安健洋を中心にしておけばいいわけだしね。そのクラスの選手が2人いるわけだから、どちらかを出しておけばある程度落ち着くわけだよ」
大住「そうだと思う。今回CBに入った伊藤洋輝も谷口彰悟もちゃんとできることを見せていたし」
後藤「吉田と伊藤または谷口、冨安と伊藤または谷口と、いろいろな組み合わせができるわけだからね。吉田と冨安が2人ともいないと、多少は違ってくるけど」
大住「レギュラー格を後から出す形になったけど、今回の交代選手は良かったね。例えば本大会で絶対に勝点3が欲しい第2戦のコスタリカ戦でも、ある程度ターンオーバーしたメンバーを出しておいて、残り30分で主力を投入して勝負をつけるということは十分できるし。いろいろなことができる可能性を見せた試合だった」
■相馬は欧州レベルに近づいている
――攻撃面での交代選手はどうでしたか。
大住「相馬勇紀が良かった」
後藤「相手が疲れている場面で出てきた優位性もあったけどね」
大住「それもあるけれど、本当に戦えるし、判断がヨーロッパのレベルのサッカーになっているよね」
後藤「サイドのポジションの選手は、守備ができるかが大きな違いになる。アメリカ戦で左サイドで先発した久保建英はすごく守備を頑張ったし、今回の相馬も守備をした。その部分で優劣がつくんじゃないかと思う。アメリカ戦の久保と伊東純也が両サイドで、攻撃ももちろんだけど、守備も頑張っていた。高いレベルの相手だとあのポジションはそうしないといけないポジションなんだと感じた。エクアドル戦先発の堂安律と三笘だと、守備面で物足りなかったな」
大住「今回の2試合で、ワールドカップ仕様でフォーメーションを最終予選の4-3-3から4-2-3-1に戻したということは、両サイドは守備に戻ってくださいということなんだよね。守る時には徹底して守備をして、攻撃に移る時にはトップとトップ下で、何とか反撃に移る時間をつくりましょうということだと思う。そういう意味では、守備ができるかどうかがサイドの選手の起用の分かれ目になるし、相馬は十分にやっていたね」
後藤「途中から出てきてドリブルで抜けたのは、何をするか相手に知られていないという優位性があった。でも、守備の面だけを考えると、間違いなく相馬の方が良かったよね」
大住「攻撃でも切れ味があったし、抜いてクロスを入れたりしていた。相馬は今回の大きな収穫だな」
後藤「最初から相馬を出しておいて、後から三笘を入れるというパターンがいいだろうね。いろいろなことが分かった2試合だった」
大住「今の調子を保っていれば、確実に本大会のメンバーに入るよね」
後藤「試合に出るかは別の話として、メンバー26人に入るのは間違いないんじゃないですか。本人としては与えられた時間が短かったから、不安かもしれないけど」