日本代表は9月27日、ドイツのデュッセルドルフで行われたキリンチャレンジカップ2022でエクアドル代表と対戦。0-0で引き分けた。

この日のゴールマウスを90分間守ったのは、30歳のGKシュミット・ダニエル(シントトロイデン)だ。197cmという恵まれた身長を生かし、際どいボールも的確に処理するのはもちろん、味方にも終始落ち着いて配球。ハイライトは後半36分、DF谷口彰吾のファールで相手が得たPKにしっかりと球筋を読んで反応、両手で斜め前方へはじいたのだ。

象徴的だったのは、そのPKによる失点を防いだ直後だろう。味方が駆け寄りファインプレーを讃えたのはもちろん、キッカーを務めたエクアドルの英雄FWエネル バレンシアは腰に手を当て呆然と立ち尽くした。スコアとしてはお互い点を許さないドローだが、しぶとく戦う強さを相手に見せつけたのは日本、中でもシュミットの勇姿だったかもしれない。

試合後、彼は自身のパフォーマンスについて「80点ぐらいですかね。良いほうです」と満足感をにじませた。「コーナーの守備のところでもうちょっと力強さが欲しかったですけど、それ以外の部分で大きな仕事はできたと思います」と本人も付け加えた通り、エクアドルのコーナーキックには再三ゴールを脅かされている。それでも前半終了間際のCKではバーを越えんばかりの高さまでジャンプ、ボールをかき出すと、後半も毅然とした態度で日本のゴールマウスを守り切った。

さらに1つシュミットの特徴を挙げるなら、高さもありながら足元の技術も持ち合わせているという点がある。彼の歴史を紐解くと、中学時代までフィールドプレーヤーだったという情報も見られ、例に漏れず今回の試合でもDFからのバックパスは落ち着いて処理、ビルドアップに貢献できていた。エクアドルの抜かりないプレスに苦戦していたチームメイトからすれば、いざという時に安心してボールを預けられる存在が最後尾にいるのは大きい。無論、ワールドカップ本番でも前からのプレッシャーやフィジカルの強い相手に苦しめられるシーンは容易に想像でき、その意味でもシュミットの存在は必要不可欠になってくるだろう。

元を辿ればシュミットには、日本代表のGKに手強いライバルが複数いた。9月25日のアメリカ戦では先発GKを務めた権田修一(清水エスパルス)、もし選出となれば自身4度目のワールドカップとなる川島永嗣(ストラスブール)、21歳と若き守護神の谷晃生(湘南ベルマーレ)も控えている。ここに優劣をつけるのは難しいが、若い頃から国際Aマッチを経験する権田が一歩リードする見方は確かに強まっていた。そこへ訪れたのが、権田の負傷離脱。2022年FIFAワールドカップ本番はさておき、この欧州遠征におけるGK勢力図が動いたことには相違ない。そして巡ってきた大一番で結果を残した事実は、日本代表を応援するファン・サポーターはもちろん、森保監督の脳裏にも深く刻まれたことだろう。

試合後、シュミットは「(今日のようなパフォーマンスを)チームに戻ってもやりたいと思います」と、日々のチームでの活動が今後において重要であることを強調した。ついワールドカップ本番へ視線が移りがちだが、彼らはまだ、誰一人として「メンバー選考」という最終関門を突破する前なのだ。地に足をつけて、とはよく言うが、今回の欧州遠征はもちろん、今後のベルギーの地での活躍が彼にとって糧となり、ワールドカップの舞台へと背中を押してくれるに違いない。


photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru

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