2020年に高校3年生にしてバレーボール日本代表に選出され、21年には東京五輪に出場。現在、日体大に在学しながらイタリア・セリエAでプレーしている高橋藍選手は、いまグングン力を伸ばしている注目の成長株だ。イタリアでプレーするだけにサッカーに触れる機会も多く、同い年の久保建英選手が気になるという21歳に、「意識」や「視野」などバレーボールにも活きるサッカーの見どころを聞いた。

――間もなくサッカーW杯が始まります。高橋選手は普段サッカーをご覧になりますか?

高橋 大好きで、よく見ています。ワールドカップを初めてちゃんと見たのは前回のロシア大会で、当時携帯のゲームでウイニングイレブンができたこともあって、海外選手に詳しくなったり、ゲームに出てきた選手のプレーを見ようと動画を検索するようになって、めっちゃ見るようになりました。やはり日本代表を一番に応援しますが、海外サッカーもパスでつなぐスタイルや若くてすごい選手がどんどん出てくるので、見ていて楽しいですね。

 特に今は僕もイタリア(セリエAのパドヴァ)でプレーしているので、テレビをつければ何かしらサッカーの試合が放映されている。むしろ試合中継だけでなく、試合を延々と解説する番組もあったり(笑)、必ずといってもいいぐらい、毎日サッカーを目にする機会があります。早口すぎてイタリア語の勉強にはハードルが高いですが(笑)、テレビだけでなく現地の新聞もサッカーをメインで扱っているので、イタリアに来て、改めてサッカー人気を実感しています。

――バレーボール選手も練習前のウォーミングアップでサッカーをする光景がよく見られます。

高橋 特にイタリアはハンパないですよ(笑)。練習前だけでなく試合前にも普通にサッカーをします。鳥かごパスの要領で、真ん中にいる選手を囲んで取られないようにパスをしたり、本格的になるとゲーム形式でサッカーをするのですが、とにかくみんなうまい(笑)。大げさじゃなく、僕のチームメイトはサッカーが好きすぎて、うますぎて、これから試合だよね? と思わず本業を忘れてしまうぐらい、ガチのサッカーを楽しんでいます。僕もうまくなりたいけど、まだまだですね(笑)。

バレーボールとサッカーの共通点

――なるほど(笑)。サッカーをご覧になるのもお好きとのこと。高橋選手が関心を寄せるサッカー日本代表選手はいますか?

高橋 久保建英選手です。同じ歳で、彼も10代からずっと海外でプレーしているので、どんな意識、どんな視野なのか、とても気になりますし、話を聞いてみたいです。ワールドカップを見ていても、自分と同じぐらいの年齢でチームの主軸としてプレーする選手がいると刺激になりますし、久保選手とは同じ東京オリンピックに出場したので、ワールドカップで見られるのも楽しみですね。いつかチャンスがあれば、実際の試合も見てみたいです。

――「意識」や「視野」とおっしゃっていましたが、サッカーを見る時、高橋選手はどんなところを特に見ていますか?

高橋 得点シーンよりもむしろそこまでの過程。特にボールを持っていない選手をよく見ています。バレーボールも、プレー中にボールを触っていない選手がどんな動きをしているか、データでも出されていますし、とても重要なポイントになるので、サッカーを見る時も目が行きますね。

 視野に関しても、サッカー選手の周辺視野はどれぐらいまで見えているのかな、何を見ているのかな、と気になります。バレーボールの場合はスパイクを打つ時、たいていの選手がボールを見て動き、打つ瞬間に相手ブロックを見て空いているところを狙って打つのですが、サッカーはフィールドが広いのでどこまで見てパスを出しているのか。とても興味深いです。

――インドアとアウトドア、接触と非接触、試合時間など違いが多いように見えるバレーボールとサッカーですが、高橋選手から見て“共通点”はありますか?

高橋 どちらもチームスポーツなので、意外と共通点も多いですよね。たとえばサッカーで、ドリブルが得意な選手がいれば目立つし、中心選手として活躍する選手なのかもしれないけれど、どれだけすごい選手でも1人では勝てない。勝敗を決める、点を取るというところで大切なのはチーム力であるのはどちらも共通していると感じます。パスを出す時も、次の人が動きやすいようにどこへボールを出すか、しかも優しく、つなぎやすいように、とか、いろいろ考えているんやろうなぁ、ってすごく気になります。

9月に21歳を迎えた高橋選手。すでに日本代表の主力として欠かせない存在となっている ©Kiichi Matsumoto
9月に21歳を迎えた高橋選手。すでに日本代表の主力として欠かせない存在となっている ©Kiichi Matsumoto

サッカー選手になれるとしたら…

――もし高橋選手がバレーボール選手ではなく、サッカー選手になれるとしたら、やってみたいポジションはどこですか?

高橋 やっぱりフォワードじゃないですか? 攻めたいし(笑)。でもバレーボールで手を使うボール扱いに慣れているから、ゴールキーパーもいいかもしれない。ジャンプもできるし、反応の速さにも自信はあります(笑)。

――PK戦のようにプレッシャーがかかる場面でも勝負強そうですね。

高橋 バレーボールにたとえるならば、最終5セット目の(15点マッチで)14対14のデュースに似た状況ですよね。その緊張感は最高やと思うし、そこでキーパーとして止めたら盛り上がる。シュートをするほうは「絶対に決めなきゃ」とプレッシャーがあるので嫌ですね(笑)。そんな場面でど真ん中に蹴る度胸と根性は、僕にはありません(笑)。

4年に一度の発見と刺激

――11月21日にいよいよカタールワールドカップが開幕します。競技は異なりますが同じ日本代表選手の1人として、また1人のサッカー好きとして、楽しみにしていることは何でしょうか?

高橋 やはり一番は日本代表が世界とどこまで戦い、どんな快進撃を見せるか。どういう結果を残すかというのが楽しみです。日本代表はもちろん、世界でも「こんな選手が出てきたのか」「これからどれだけすごい選手になるんだろう」とワクワクさせるような選手が出てくるのも、ワールドカップの魅力ですよね。4年に一度だからこその進化、発見が自分にとっても刺激になりますし、若い選手が出てくれば「自分も負けずにやらなきゃ!」と思うので、とても楽しみです。

 日本ではABEMAで全試合が見られるんですよね。いいなぁ(笑)。イタリアでも見られたら移動中など空いている時間を使って、僕も全試合じっくり楽しみたい派なのでとてもうらやましいです! でもイタリアでも日本戦を含め、見られる試合はいくつもあると思うので、存分にワールドカップを楽しみたいですね。もちろんイタリアから日本代表、応援します!

(構成=田中夕子)

©Kiichi Matsumoto
©Kiichi Matsumoto

高橋藍(バレーボール)(たかはし・らん)

2001年9月2日、京都府生まれ。小学2年生でバレーボールを始める。東山高3年時に全日本高校選手権で優勝し、その後、日本代表入り。20年4月に日本体育大学へ進学。1年時には全日本インカレ準優勝。東京2020オリンピックに出場し、ベスト8に貢献。現在、日体大に在学しながら、イタリア・セリエAのパドヴァでプレーしている。