11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はDグループだ。
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■フランス
(7大会連続16回目の出場)
前回王者で、ブラジルと並ぶ優勝候補と目される。バロンドールを受賞したカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)も、直前に復帰した昨夏の欧州選手権の時より「レ・ブルー(フランス代表の愛称)」にフィットしてきている。
ディディエ・デシャン監督もキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリー)との強力3トップをベースとして、新鋭クリストファー・ヌクンク(RBライプツィヒ)をオプションに組み込むなど、本番仕様の陣容ができているようだ。
欧州予選を磐石に突破したあと、アフリカ勢のコートジボワールと南アフリカに親善試合で連勝したが、その後のネーションズリーグの成績は、1勝2分3敗と良くない。特にW杯で同組のデンマークには2連敗した。そこは多少、手の内を隠す意味も含めて、あまり気にする必要はないだろう。
中盤の主力だったポール・ポグバ(ユベントス)とエヌゴロ・カンテ(チェルシー)が長期離脱でW杯も絶望的とされるが、逆にエドゥアルド・カマビンガやオーレリアン・チュアメニ(ともにレアル・マドリー)がブレイクする大会になるか。
■デンマーク
(2大会連続6回目の出場)
昨夏の欧州選手権では、クリスティアン・エリクセンの心停止というショッキングなアクシデントを乗り越えて、ベスト4進出を果たした。そのエリクセンも奇跡的なカムバックを果たし、マンチェスター・ユナイテッドで躍動。代表では、4-3-3の中央から攻撃の全権を握る。
純粋なタレント力では、同組のフランスなどより一段落ちるが、適材適所で選手たちが輝き、周囲と見事なまでにリンクしているのはデンマークの強みだ。時に左のミケル・ダムスゴー(ブレントフォード)と、右のアンドレアス・スコフ・オルセン(クラブ・ブルージュ)という22歳の両翼がチャンスを作り、FWキャスパー・ドルベア(セビージャ)がダイナミックに合わせる前線の鋭さは、列強にとっても脅威だろう。
勢いに乗れば、前回準優勝のクロアチアのような躍進も十分に可能だ。
■チュニジア
(2大会連続6回目の出場)
アフリカ予選ではタレント集団のマリを破って、2大会連続出場を決めた。現状、ワールドクラスのタレントはいない。それでも、ジャレル・カドリ監督が植え付けたチームの組織力はデンマークに勝るとも劣らないレベルで、攻守のビジョンが見事にハマった時のパフォーマンスは、2戦ともに無失点で勝利した6月の親善試合でも証明している。
その反面、相手に気圧されて一度崩れた時の脆さは、退場者が出るなど、1-5で大敗したブラジル戦で垣間見られた。4-1-4-1がベースで、基本は司令塔エリス・スキリ(ケルン)を軸に、シンプルな展開から徹底したサイドアタックを仕掛ける。
そして、19歳の新鋭ハンニバル・メジブリ(バーミンガム)が中盤に投入されると一転して、中央突破のベクトルが強まる。指揮官が「カルタゴの英雄」と同名のヤングタレントをいつ投入するかも注目だ。
■オーストラリア
(5大会連続6回目の出場)
前回に引き続き、大陸間プレーオフを制してW杯の切符を掴んだ。異なるのは指揮官の交代なく、グレアム・アーノルド監督がそのまま本大会も率いること。ボールポゼッションを大事にするスタイルは継続しているが、オージーらしい勝負どころでの力強さは必要な時に発揮できる。
アイディン・フルスティッチ(ヴェローナ)に頼りがちだった中盤だが、朗報は夏にセルティックを退団してから所属先が未定だったトム・ロギッチが、WBAに加入できたことだ。
初戦がいきなり優勝候補のフランスとなるが、好勝負に持ち込んで勝点1でも奪い取れれば、グループステージ突破の可能性も見えてくる。
【グループD展望】
本命のフランスはオーストラリア、デンマークはチュニジアとの初戦なので、2強が順当に勝点3を得ると、グループの行く末が見えてきてしまう。
ただ、欧州主要リーグの中断から1週間で開幕するイレギュラーな日程で、チャレンジャースピリットの強いオーストラリア、組織的にまとまっているチュニジアが衝撃的な勝利を飾る可能性はわずかながらある。少なくとも奮闘の末、勝点1を得られたら大きいだろう。
フランスはネーションズリーグでデンマークに2連敗しており、両雄が激突する第2戦は、意地とプライドがぶつかる戦いになるかもしれない。レギュレーションを考えると、この注目カードがあることで、裏側のオーストラリアとチュニジアはどちらも勝点3が欲しい。負ければ3試合目を待たずして敗退が決まる可能性も。
注目はフランスとデンマークに集まるだろうが、意外と裏側のカードが名勝負になり得る。第3戦はデンマークに挑むオーストラリア、フランスに挑むチュニジアともに突破の可能性を残しているか。その条件でも変わりうるが、目標が先にあるデンマークやフランスよりも、全力でこの試合にかけられるのはアドバンテージになるかもしれない。
文●河治良幸
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