11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はグループFだ。
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■ベルギー
(3大会連続14回目の出場)
2014年ブラジル大会ではベスト8、2018年ロシア大会は3位。現在FIFAランキング2位で、予選後のネーションズリーグでも好調が続いている。列強のライバルに比べると怪我人も少なく、史上9番目の優勝国となる条件は揃っている。
強いて不安要素を挙げるなら、司令塔ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)など、主力の平均年齢が高くなり、若手がメンバー入りこそしても、なかなか突き上げられていないこと。ファーストチョイスに組み込まれているのは、3バック右の19歳ゼノ・デバスト(アンデルレヒト)ぐらいだ。
そして2016年から率いるロベルト・マルティネス監督の戦術が、良くも悪くも固定化していることだ。3-4-2-1を可変させるスタイルは、ある意味、成熟したクラブチームのようである一方、それだけに対戦相手に分析されやすい。そうしたなかで、21歳のMFアマドゥ・オナナ(エバートン)やFWチャールズ・デ・ケテラエル(ミラン)の躍動が期待される。
■クロアチア
(3大会連続6回目の出場)
前回大会で準優勝に輝いたクロアチア。引き続き、大黒柱はルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)だが、37歳になってもプレーは研ぎ澄まされている。
ライバルのベルギーと同じく、主力の平均年齢は上がっているが、中堅の充実や若手の台頭も見られる。4-3-3のディフェンスラインでは、右サイドバックに22歳のヨシプ・スタニシッチ(バイエルン)、センターバックでは20歳のヨシュコ・バルディオル(ライプツィヒ)が順調に成長してきている。
中盤ではモドリッチの後継者たるマテオ・コバチッチ(チェルシー)が、さらに頼れる存在になってきた。ズラトコ・ダリッチ監督が若手・中堅・ベテランをどうミックスさせて、グループステージ、決勝トーナメントと戦い抜いていくか。
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■モロッコ
(2大会連続6回目の出場)
アフリカ予選を危なげなく突破した直後、前回の日本に続き、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任劇が起きた。規律を徹底させる指揮官と、ヌサイル・マズラウィ(バイエルン)やハキム・ジイェフ(チェルシー)など主力を含む数人に不和があり、事実上の追放が言い渡された。
その後、一部の選手とは和解が伝えられたが、完全修復には至らず。協会も擁護できなかった。後任は元モロッコ代表DFのワリド・レグラギ監督に。代表監督の経験が無く、大舞台での手腕は未知数だ。
代表引退を表明したジイェフも復帰するなど、チームマネジメントを見れば状況は改善した様子だが、ベルギーやクロアチアに対抗していけるのか。4-3-3の各ポジションにタレントがおり、アンカーのソフィアン・アムラバト(フィオレンティーナ)の安定したパス捌きと、マズラウィ、アシュラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)という左右サイドバックの攻め上がり、ジイェフの局面打開力などが、クロアチアとの初戦からハマれば勢いに乗りそうだ。
■カナダ
(9大会ぶり2回目の出場)
北中米カリブ海予選でメキシコ、アメリカを上回る成績で、1986年のメキシコ大会以来となるW杯出場を決めた。
その立役者はジョン・ハードマン監督だ。女子代表で評価を高めた気鋭の指揮官は、機動力を活かしたアグレッシブなフットボールを植え付けた。バイエルンでは左サイドバックとしてブレイクしたアルフォンソ・デイビスを、3-4-1-2のトップ下に配置。“王様ポジション”から、あらゆる攻撃に絡めるメカニズムを作り上げている。
もっとも、そのデイビスであっても守備のハードワークは例外なく求められる。適材適所で全ポジションの選手に見どころはあるが、32歳ながら高い走力を誇る右ウイングバックのデイビッド・ホイレット(レディング)は攻守両面で頼りになる存在だ。
【グループF展望】
順当なら優勝を狙うベルギーと、前回準優勝のクロアチアが突破しそうだ。モロッコはタレント集団だが、やはり攻守のトランジションで欧州の2強より落ちると見られるうえに、ハリル解任で急遽、就任したレグラギ監督の経験値を考えても、大会前の評価は下げざるを得ない。
ただ、直接FKの得点力もあるジイェフ、サイドバックから破壊的なオーバーラップを繰り出すハキミなど“飛び道具”があるのはライバルにも不気味だろう。
カナダは間違いなく好チームで、もしかしたら旋風を巻き起こすかもしれない。ただ、“弱者のサッカー”を徹底するチームではないので、機動力を活かしたサッカーがベルギーやクロアチアに上手くハマらないと、ミスマッチを逆利用されて大量失点する危険もある。
二強が3試合目の直接対決を前に、お互い2連勝で、すんなり突破を決めるのか。逆に、もし決まっていなければ、ベルギーとクロアチアの負けたほうが敗退というシチュエーションにもなりうる。ラウンド・オブ16でE組の突破チームと当たるだけに、注目したいとろだ。
文●河治良幸