●サッカー日本代表、強度不足の原因は?

サッカー日本代表は27日、キリンチャレンジカップ2022でエクアドル代表と対戦し、0-0の引き分けに終わった。高い強度で主導権を握った23日のアメリカ合衆国代表戦とは対照的に、この日はエクアドル代表のペースが続いた。2試合を通じて手応えを得た部分がある一方、ワールドカップに向けて改善の余地を残すこととなっている。(文:西部謙司)
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 エクアドル代表戦は0-0とはいえ、シュミット・ダニエルのPK阻止もあり負けに近い引き分けだった。

 米国代表戦から先発全員を入れ替えたターンオーバーは極端だが、中3日の3試合となるグループリーグの戦い方として考えているのだろう。緒戦のドイツ代表戦は消耗が大きくなると予想されるので、全員はともかく選手の入れ替えは必要になりそうだ。しかし、今回のテストは不安が残るものだった。

 試合のポイントは米国戦に続いて敵陣でのハイプレスと自陣のビルドアップだったが、どちらも十分ではなかった。エクアドル代表のほうが技術と球際の強さがあったことも原因だが、それを差し引いても課題が目立っていた。

 ハイプレスに関しては、エクアドル代表のボランチ落ちの3枚回しに対しての対応ができていなかった。さらに強度不足だったのが決定的である。

 巧い、速い、強いという特徴でいうと、米国代表戦の先発メンバーで「強い」特徴を持たないのは久保建英だけだった。久保は巧くて速いが球際の強度はそれほどない。一方、エクアドル代表戦では古橋亨梧と三笘薫が巧さ&速さ、柴崎岳は巧さが特徴。強度を特徴としないタイプが3人だった。

●向いていない南野拓実の役割とボランチの差

 ビルドアップについては自陣で失う機会こそ少なかったものの、ハーフウェイライン付近で失う回数は多かった。南野拓実へのクサビで攻撃のスイッチを入れようとしたが上手くいっていない。南野がこの役割に不向きなのはわかっていたはずなので、他に収められるタイプのアタッカーと組み合わせなかった編成の問題でもある。

 田中碧、柴崎のボランチの組み立ても、守田英正、遠藤航のコンビとは差があった。古橋の長所を全くといっていいほど活用できず、三笘や堂安律に良い形でボールを持たせた回数も少なかった。

 敵陣で奪えず、堂安、古橋、三笘の個の能力も発揮できずでは、他に手のない現状で得点チャンスは作れない。前半は相手のプレゼントボールから古橋が放ったシュートが唯一の決定機だった。

●ターンオーバーが機能しなかった原因

 後半に上田綺世がCFに入り、球際の強さを生かして起点となってからチャンスは増えた。収めるタイプのFWが入ったことで南野もセカンドトップとして特徴を出し始めたが、三笘のプルバックを仕留められなかったのは痛恨だった。

 鎌田大地、遠藤、相馬勇紀が交代出場してからは、遠藤と鎌田がビルドアップに良い形で関与して安定的に運べるようになり、上田と堂安にビッグチャンスがあったが決めきれず。GKシュミットのPKストップを含むファインプレーもあって辛うじて引き分けた。

 終盤の約10分間は米国代表戦に続いて5バックに変更している。システムは4-2-3-1とアジア予選のメインだった4-3-3、さらに5-3-2あるいは5-2-3を用意したので状況に応じて使い分けるつもりなのだろう。

 結果的にターンオーバーは機能したとは言い難いものの、編成上の問題が大きいので、調整しだいでは改善の余地はある。コンセプトの浸透は感じられ、ターンオーバーするうえで必須となる選手層もある程度の手ごたえは得られた。ただ、古橋を筆頭にアタッカーの活かし方、相手の守備ブロックを崩しての得点力など、この段階でも不透明なところは残されたままではあった。

(文:西部謙司)

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