日本代表はカタール・ワールドカップ開幕前、最後となる対外試合を終えた。あとは23日のドイツ代表戦を待つばかりだ。準備試合のカナダ代表戦で何が見え、大会初戦までにあとは何をするべきか、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り尽くした。

■柴崎が良く見えたが…

――ワールドカップ前、最後の調整の試合が終わりました。

大住「いや、調整じゃなかったんだよね。リハビリ試合だよ。メンバー発表の時に心配した通り、試合に出ていない選手だけじゃなくて、ケガから復帰してようやくプレーできるようになったばかりの選手に、試合体力だとか試合勘を取り戻させなければいけない、という試合の使い方だったよね。初戦まであと1週間くらいだけど、他に試合をしなくていいの、というのが正直な感想。心配だなあ」

後藤「リハビリができて良かった、ということしかないですよね。板倉滉が使えそうだと分かったのが、一番良かったことかな」

大住「柴崎岳が、すごく良く見えた。すごく頑張っていたし、ディフェンスラインのカバーをして、危ないところでクリアした場面もあったしね。1点目のパスも良かったし、斜めに蹴るロングパスも良かった。柴崎らしいプレーをしているなと思ったんだけど、そのくらい…」

後藤「周りとの兼ね合いで、今回は柴崎が中心になっていたね」

■田中への落胆

大住「田中碧は、メンバーに選んだのは間違いだったんじゃないかなと思うくらいの出来だったね。去年はあれほど輝かしかったのに、と思うくらいひどかった。軽いプレーでボールを取られて即ピンチに陥っていたし、相手がトーマス・ミュラーだったら、そのまま決められているよ」

後藤「田中、南野拓実、浅野拓磨あたりがちょっと、ね」

大住「登録メンバーとして26人呼べたとはいえ、そういう選手がいるということ自体が、このチームの厳しいところかなと思うんだけどな。選手の本当のコンディションは、こちら側には分からないことだし、他にはメンバーの組みようもなかったのかもしれない。森保一監督の話を聞くと、試合に出ていない選手に試合体力――久々にそんな言葉は聞いたなと思ったけど――などをテーマとしてやらせた、と言っていたね」

後藤「この試合は、それが目的だったわけだよ」

■計画に齟齬?

大住「森保監督が希望したからこういう試合を組んだはずなんだよね。ドイツ戦の6日前に、できればワールドカップに出る相手との試合を組んでほしいと要望して、カナダとドバイのスタジアムで対戦できた。当初は違うことを考えていたはずで、リハビリのための試合じゃなかったはず。ということは、大きな計画に齟齬が生じたということじゃないかな」

後藤「不可抗力だから、しょうがない部分がある。招集メンバー発表後に選手がケガをしたのは、森保監督の責任じゃないもの。メンバーを決めた後の選手のケガには、一切責任はないよ。ケガをしていても選んだ選手がうまく回復していなかったというなら、森保監督とスタッフ全員の責任だけど」

大住「クラブで試合に出ていない選手の調子にも、同じことが言えるよね。とにかく、責任がどうというより、心配なんだよね」

後藤「それでも、状態のよくない選手が集まって、あれだけの試合ができるんだから、大したものだよ」

大住「そうかな。決定的なチャンスはいくつもなかったように思うけど。最初は浅野や相馬が裏に抜け出して、実際に1点は取った。久保の惜しいシュートが1本あったけど、その後はカナダの方がチャンスは多かった。南野が上田綺世のポストプレーで抜け出したシーンがあったけど、強いシュートを打てなかった。去年の最終予選が始まった頃の南野に戻っていると感じたな」