サッカー日本代表は、23日のカタールワールドカップ初戦・ドイツ代表戦に向けて調整を進めている。堂安律はドイツ代表の多くがプレーするブンデスリーガで2位につけるフライブルクで主力を張る。そんな堂安だからこそ、ドイツ代表を「つけ入る隙がある」と分析している。果たして、その自信の根拠はどこにあるのだろうか。(取材・文:元川悦子【カタール】)

●サッカー日本代表、ドイツ代表戦のキーマン

 相馬勇紀の先制弾でリードしながら、1-2でまさかの逆転負けを喫したカナダ代表戦から2日が経過した19日、日本代表がドーハで再始動した。

 1日のオフを経たこの日、森保一監督や選手たちは全員で記念撮影と練習を行った。冒頭30分以外は非公開で、23日に迫るカタールワールドカップ(W杯)初戦・ドイツ代表戦に向け、集中して戦術確認を行った模様だ。

 公開された部分はランニング、フィジカル、ボール回しという通常通りのメニュー。これには脳震盪回復プログラム最終段階を迎えた遠藤航、体調不良で合流が遅れた三笘薫、右足負傷でカナダ代表戦を欠場した冨安健洋の3人が合流。彼らは何とか初戦に間に合いそうな雲行きだ。

 その反面、左ふくらはぎ違和感の守田英正はいまだ完全別調整。ドイツ代表戦出場はかなり厳しくなってきたと言える。代役候補の田中碧には、調整スピードを一気に上げてもらわなければならないだろう。

 16日にオマーン代表と親善試合を行ったドイツ代表も、同日からドーハでの練習をスタートさせており、ケガで離脱していたトーマス・ミュラーとアントニオ・リュディガーが合流。不在だったのは、風邪で休んだニクラス・フュルクルク1人で、現有戦力のベストメンバーが本番に出てくる見通しだ。

 そんな状況だけに、日本代表としてはまず自チーム状態をトップに引き上げ、敵の隙を突くクレバーな戦い方にチャレンジしていく必要がある。その重要性を強調するのが、今季ブンデスリーガ1部・2位のフライブルクでコンスタントに活躍する堂安津だ。

●「勝てるチャンスは大いにある」堂安律が自信を持つ理由

「(ドイツは)特にブンデスでやってる選手は多いので、相手の特徴も知ってる選手が多い。勝てるチャンスは大いにあると思います」と彼は力強くコメント。同じくドイツでプレーする鎌田大地と同様に、W杯で過去4回優勝しているドイツ代表を格上と見るのではなく、同じ目線で捉えていくという。

 なぜ堂安がそういった意識を持てるのか。背景として一番大きいのが、フライブルクでの確固たる実績だろう。今季の彼はリーグ戦出場15試合(うち先発13試合)で2ゴールと好調を維持。UEFAヨーロッパリーグ(EL)やDFBポカールなどのカップ戦でも2ゴールと完全なる主力として活躍している。

 しかも、前述の通り、チームはリーグ戦で2位につけている。マティアス・ギンターとクリスティアン・ギュンターという2人のドイツ代表選手も同僚だ。彼らからは「もう友達じゃない」と言われ、堂安は堂々と無視したというから、そのメンタルの怪物ぶりがよく分かる。ドイツ代表を7人送り出したバイエルン・ミュンヘンと勝ち点4差しかないことも含め、堂安が「自分は同格のプレーヤーだ」と考える要素がいくつもあるのだ。

「昔のイメージ的には、ドイツはより組織的でその中に個がある印象だったんですけど、最近は少し個が強くなりすぎてて、組織がバラバラになってるイメージがある。(ジャマル・)ムシアラや(レロイ・)サネや(セルジュ・)ニャブリといった前のタレントはいますけど、彼らがチームプレーヤーかというと少しハテナだと思う。そこはつけ入る隙があるのかなと」

●「日本代表が積み上げてきた財産で間違いなく勝てる」

「もう1つは『ゲーゲンメンタリティ』という言葉があるように、トーナメントに強いイメージがあったんですけど、4年前のロシアを見ても分かる通り、経験ある選手が引退していって、それが少しずつ薄れているのかなと。日本は経験値のある選手が残って若い選手に伝えている。日本が積み上げてきた財産で間違いなく勝てる相手だと思ってます」

 このポジティブシンキングを実際のパフォーマンスにつなげ、日本代表を勝たせる仕事ができれば理想的だ。おそらく現状だと右サイドは伊東純也がスタートで出る可能性が高く、攻撃の切り札である彼がピッチに立つとしたら後半から。同点、もしくは劣勢に陥っている中での投入になるだろう。となれば、堂安はガムシャラにゴールを狙いにいかなければいけない。

 対面の相手左サイドバック(SB)にはダヴィド・ラウムが陣取ると予想される。彼をどう攻略するかを第一に考えることが肝要だ。

「カナダとやった時にはかなり相手のフィジカルが強くて速い選手が多かったですけど、逆にドイツはそういう選手が少ない。フィジカルは強いけど、アジリティはカナダみたいな能力がないと見ています。

 ラウムに関しても、特に苦手意識はない。互角にやりあえると思ってるんで、期待してもらえたらと思います」と虎視眈々と背後を狙っていくつもりだ。

●3年10ヶ月ぶりのゴールで勝利に導く

 ドイツの場合はムシアラやサネのアタックが破壊力抜群であるため、堂安も守備のサポートに入る回数が多くなるかもしれない。しかし、それも含めて問題ないという。

 攻守両面のバランスをしっかり見つつ、ここ一番でグイっとゴール前に侵入し、パンチ力あるフィニッシュを決めてくれれば、20歳だった自身を4年前に抜擢してくれた指揮官の恩に報いることができるはず。2019年のAFCアジアカップ準決勝・ベトナム代表戦以来となる3年10か月ぶりの得点を奪うこと。それが堂安に課せられた最重要命題と言っていい。

 正直言って、この4年間の彼は代表で順調な軌跡を歩んできたわけではなかった。当初は南野拓実、中島翔哉とともに「三銃士」と称され、新生ジャパンの攻撃陣を担う存在と位置づけられていた。

 その後、伊東の躍進によってスタメンの座を追われる格好になったが、堂安には堂安の強みがあるし、底力もある。今季のフライブルクで実証している力を、W杯という大舞台でも発揮できるはず。チームが変わればフォーメーションも連係面も異なるため、必ずしも同じ仕事ができるわけではないが、ドイツで蓄積している経験は必ず生きるに違いない。この試合こそ、それを発揮する場なのである。

 東京五輪世代のエースがA代表のエースになれるか否か。それは今回のW杯にかかっていると言っても過言ではない。「日本のメッシ」と評された男の真価をドイツ相手に示し、強豪撃破の急先鋒になってほしいものである。

(取材・文:元川悦子【カタール】)

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