日本のグループステージ突破の命運を左右するコスタリカ戦が、現地時間11月27日に行なわれる。

 23日のドイツ戦勝利から中3日。選手たちは回復に努めていたが、酒井宏樹(浦和)と冨安健洋(アーセナル)は26日も別メニュー調整を強いられており、次戦欠場は決定的と見られる。

 こうしたマイナス面もあるが、日本は2戦目で勝点3を取ることが必須だ。しかも、直後のドイツ対スペイン戦でドイツが勝利し、日本がコスタリカに勝ったと想定して、12月1日のスペイン戦に敗れれば、3チームが2勝1敗で並び、得失点差で順位決定という状況も起こり得る。これが実に厄介だ。

 96年アトランタ五輪でも、日本は初戦でブラジル相手に「マイアミの奇跡」を起こしたが、2戦目でナイジェリアに苦杯。ラストのハンガリー戦に勝利したものの、得失点差で3位となり、敗退を強いられている。

 そういった最悪のシナリオを回避するためにも、コスタリカ戦では複数得点が必須。ドイツ相手に2ゴールをマークした攻撃陣には、さらなる勢いを見せてほしいものである。

「相手は後がないなか、たぶん前から、けっこう来ると思う。日本はカウンターが増えるのかなと。僕を含めて前線の選手は奪った後に飛び出していく準備をしていければいい」と久保建英(R・ソシエダ)は言う。

 三笘薫(ブライトン)も「ボランチのところが空くと思う。そこからの背後への動き出しだったり、サイドでの1対1で勝てるかどうかが重要になってくる」と強調。縦に速い攻めが有効であるという共通認識を持っている様子だ。

 ご存じの通り、コスタリカはもともと堅守をモットーとするチーム。GKケイラー・ナバス(パリSG)を筆頭に、自陣に強固なブロックを作って守るというメンタリティが強い。
 
 だが、今回は点を取って勝たなければならず、前線のホエル・キャンベル(レオン)や、左サイドの18歳のキーマン、ジェウィソン・ベネット(サンダーランド)らは前へ前へという意識を押し出してくるはずだ。

 そうなると、攻守のバランスが崩れ、ポッカリとスペースが空く可能性は少なくない。それは伊東純也(S・ランス)も指摘していた点。この穴を突きながら、サイドを有効に使い、相手を引き出して背後を突く形を作れれば、ゴールを奪うことは難しくないはず。

 早い時間帯に先制できれば、大量点を奪う展開に持ち込める可能性もある。だからこそ、今回は序盤から一気にギアを上げて向かっていくべきなのだ。

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 そんな攻撃陣のカギを握りそうなのが、中盤のタクトを振るう柴崎岳(レガネス)。17日のカナダ戦でも見せたような長短のパスやサイドチェンジを駆使して揺さぶりをかければ、コスタリカの堅守も綻びが生じる。

 そこをポジショニングに長けた堂安律(フライブルク)や南野拓実(モナコ)、タッチライン際の突破力に秀でた相馬勇紀(名古屋)ら2列目アタッカー陣が攻略していけば、上田綺世(S・ブルージュ)や浅野拓磨(ボーフム)がゴール前でビッグチャンスを仕留められる確率も上がるはずだ。

 後半の途中からはオープンな展開になると予想されるため、交代出場が予想される久保、三笘、伊東らにとっては大きなチャンス。縦と背後の意識を強く持ちながら、ゴールへの推進力と迫力をもたらし、得点を重ねること。それができれば、複数得点も十分可能ではないだろうか。

 三笘が「ボランチが空く」と言っているように、柴崎らボランチ陣が遠目からシュートを打てる機会も巡ってきそうだ。守田英正(スポルティング)、田中碧(デュッセルドルフ)もパンチ力のあるミドルを持っている。

 過去の代表戦ではそれが決まるケースがほぼなかったかもしれないが、目に見えない力が働くW杯では何かが起きるかもしれない。そういう意味でも、彼らのフィニッシュに期待を寄せたい。

 今の日本代表は特定の得点源が存在しないチーム。逆に言えば、誰でもゴールを奪えるのが強みだ。だからこそ、森保一監督が思い切ったターンオーバーを決断できる状況にあると言っていい。
 
 そういった集団ゆえに、今回はドイツ戦でゴールを奪っていない南野や相馬、鎌田大地(フランクフルト)、三笘、伊東といったアタッカー陣、上田や前田大然(セルティック)らFW陣には奮起を求めたい。

 日替わりヒーローが出てくることで、チームも盛り上がるし、前向きな競争が起こるからだ。それが選手層の厚み、攻撃バリエーションの多様化につながれば理想的だ。

 わずか1年前まで「大迫依存症」と言われていたチームの変貌ぶりには驚かされるが、それこそが森保監督の狙っていたチームの進化だ。それをコスタリカ戦で実証してほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)