■11月27日/カタールW杯 グループE第2戦 日本代表 0ー1 コスタリカ代表(アハマド・ビン・アリスタジアム)
ドイツ戦のようにはいかなかった。
システム変更も、選手交代も。
カタールW杯8日目の11月27日、日本はコスタリカとのグループステージ第2戦に臨んだ。
森保一監督は、先発を5人入れ替えた。右SBに山根視来、ダブルボランチの一角に守田英正、2列目右サイドに堂安律、同左サイドに相馬勇紀、1トップに上田綺世が起用された。システムは同じ4-2-3-1である。
黒星スタートのコスタリカは、日本以上に勝点を欲していた。アグレッシブに出てくることも予想され、本来のカウンタースタイルだとしても、ボールを握ることはできる。スピードを武器にスペースを突く前田大然や浅野拓磨ではなく、ポストプレーのできる上田を1トップに置くのは、ひとまず論理的な選択だった。
ターンオーバーそのものについては、「ベスト8以上」との目標設定からの逆算だ。森保監督はW杯の開幕以前から、「勝ち進むためにはターンオーバーが必要」との意識を選手たちに植えつけてきた。その具体策として、チームコンセプトを全員が共有してきた。
戦前の想定どおりに、前半からボールを握ることはできた。しかし、攻撃の狙いは表現できたものの持続力に欠け、自分たちでリズムを崩すようなミスも散見された。
■森保監督が板倉に声をかけ、指で「3」と示した
森保監督が動いたのは35分過ぎだ。
板倉滉に声をかけ、指で「3」と示した。4バックから3バックへ変更する、とのメッセージである。
4-2-3-1から3-4-2-1への変更は、ドイツ戦と同じだ。違ったのはタイミングで、ドイツ戦は後半開始から3バックに変更したが、この日は前半終了を待たずに手を加えた。
「こういう大きな大会で、緊張感のあるなかで、流れのなかで(システムを)変えるのは難しい。ただ、攻めてボールを保持している時間が長かったので、変えられるという判断だったのだと思う」
こう話すのはキャプテンの吉田麻也である。臨機応変さや柔軟性という意味で、このタイミングでのシステム変更にネガティブさはない。
そもそものところで言えば、W杯アジア最終予選の主戦術だった4-3-3でなく、9月の欧州遠征から再び採用した4-2-3-1でもなく、3-4-2-1をW杯で積極的に採用していることに、率直に驚かされる。
サンフレッチェ広島を指揮していた当時の森保監督は3-4-2-1を採用しており、戦術的な落とし込みのノウハウは手元にあるのだろう。さらに言えば、非公開練習というカーテンの向こう側で、かねてからトレーニングを重ねてきたのかもしれない。それにしても最終予選突破後になるはずで、6月と9月のタイミングしかない。
いずれにせよ、実戦でほとんど使ってこなかった3-4-2-1のシステムを、選手たちは戸惑うことなくプレーしている。これは評価されるべきである。
■大迫勇也を外した時点で想定内だったが……
そのうえで言うと、4-2-3-1が機能しないことが気になる。チームの主戦術となるはずのシステムを、かくも早い時間で変更してしまう──それでいいのだろうか。
W杯の出場各国を見ても、ファーストチョイスのシステムが固まっており、必要に応じてオプションを採用している。システムは変えずに、選手交代で変化を加えるチームも多い。
それに対して日本は、主戦術の4-2-3-1でプレーしている時間帯にチームが機能していない。ドイツ戦もコスタリカ戦も、前半のパフォーマンスが良くないのだ。
日本の4-2-3-1は、守備の局面では4-4-2になる。3ラインをコンパクトに保つことを前提として、守備の穴を作りにくいシステムだ。
一方で、攻撃がいまひとつ機能していない。大迫勇也を外したところから想定内だったものの、コスタリカ戦のトップ上田綺世は前線で起点になりきれなかった。起点になった場面もあったが、散発的だった。
4-2-3-1と3-4-2-1のどちらがスムーズなのかを問えば、今回のW杯では明らかに後者である。そして、4-2-3-1と同様に3-4-2-1にも、26人の選手を無理なく当てはめることができる。
コスタリカ戦を3-4-2-1からスタートしていれば、交代カードが変わっていただろう。長友佑都ではなく伊藤洋輝を最初から起用していれば、攻撃のカードをもう一枚切ることができた。1点を追いかける展開になったところで、町野修斗を前線に加えることができた。
グループステージ最終戦で対戦するスペインは、紛れもない強敵だ。ドイツ戦やコスタリカ戦のように、前半のパフォーマンスが芳しくないと、確実に傷を負う。ターンオーバーを前提としたスタメンだけでなく、スタート時のシステムも考えるべきだ。