サッカー日本代表は5日に行われるカタールワールドカップの決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦する。

 1勝2分の勝ち点5、3試合のうち2試合がスコアレスドローという手堅い戦いぶりでグループステージを突破してきたクロアチア代表をいかに攻略するか。日本代表は森保一監督をはじめとしたスタッフ陣と選手たちとが一緒になって策を練っている。

 DF冨安健洋は「0-0が2試合あって、しっかり堅いと思います。もちろん(カナダ代表戦で)4点取ってますけど、どちらかというと3試合で1失点のところの方が印象に残っています」と、クロアチア代表の堅実さを警戒していた。

 高い守備力を発揮できている要因としてはディフェンス陣の奮闘によるところも大きいが、クロアチア代表の強みはそれだけではない。状況に応じて的確にゲームをコントロールする中盤のトリオが、彼らの戦いのカギを握っている。

 レアル・マドリード所属のMFルカ・モドリッチ、チェルシー所属のMFマテオ・コヴァチッチ、そしてインテル所属のMFマルセロ・ブロゾヴィッチの3人で構成する中盤のクオリティは「今大会に出ている国の中でもベストの1つ」だと冨安は分析する。

 中でもチームの象徴として絶大な存在感を発揮するモドリッチは、日本代表選手たちにも大きな影響を与えてきた選手だ。2018年にバロンドールを受賞した37歳のベテランは、衰え知らずのパフォーマンスでクロアチア代表を引っ張っている。

 MF田中碧は「どのエリアでもプレーできる選手の象徴。動けるボランチで、得点も取れる世界的に見てもトップクラスの選手だと思います。タイプ的に僕も広範囲に動くボランチなので、彼のプレーを見ますし、ポジショニングや彼のアウトサイドパスには憧れます。他の選手とは一味違う」と、モドリッチとの対戦を心待ちにしている。

 アイントラハト・フランクフルトの一員として、マドリーのモドリッチと対戦経験を持つMF鎌田大地も「彼のプレーを見るのは本当に大好き。僕は将来、モドリッチになりたいというわけではないですけど、ああいう何でもトップ・オブ・トップでできる選手を目指さないとダメだと思う」と述べ、「彼は僕にとっては常に良い参考になる選手」とリスペクトが溢れ出る。

 では、モドリッチを中心としたクロアチア代表の中盤トリオをいかに封じるか。田中は「彼らに時間とスペースを与えないことがすごく重要になる。そこの攻防しだいで展開が大きく変わりますし、局面でどちらが多くボールに関われるかでもゲームが変わる」と述べ、「そこがキーポイントの1つになるんじゃないか」と指摘する。

「個人的な感覚で言うと、どの選手もどのエリアでもプレーできる、すごく動ける選手たちだなと。ブロゾヴィッチを見てもすごく上がって来ますし、左右にも動く。フレキシブルで広範囲に動ける機動力はどの選手にもあるので、それはクロアチア代表の大きな武器でもある」(田中)

 DF谷口彰悟は「スペイン代表は(ガビやペドリが)ハーフスペースに常にいましたけど、ブロゾヴィッチやモドリッチは流動的に動いてボールを受けにいくことがある。(アンカーの)ブロゾヴィッチはペナルティエリア内に入ってくることがあるくらいの動きをすることもある」と、頻繁にポジションチェンジを繰り返して対戦相手を翻弄する特徴に言及した。

 クロアチア代表の心臓部を構成するモドリッチ、コヴァチッチ、ブロゾヴィッチに「時間とスペースを与えない」ためには、中盤で日本代表選手たちがマンツーマンになるくらい付かず離れずの距離を保ち続ける必要がありそうだ。

 鎌田は「インテンシティの部分でも、チームとして連動して動かないとすぐ剥がされてしまう」と警戒するが、それでも相手の4-3-3と中盤の形を噛み合わせるよう4-2-3-1のフォーメーションに選手を配置し、時にダブルボランチとトップ下の並びが崩れようともしつこく食らいついていくのが最善策ではないだろうか。

 そして、ボールを奪ったらドイツ代表戦やスペイン代表戦のようなカウンターで仕留める。、鎌田は「ドイツ代表やスペイン代表よりも、自分たちがボールを握れる時間を作れて、(ボールを)奪ってからのショートカウンターはもちろんやりやすくはなる」と見ている。中盤の流動性が高い反面、ポジショニングが甘くなった瞬間には反撃のチャンスがあるだろう。

 その時に狙うのは、サイドだ。FW堂安律は「真ん中は堅い選手が多くて、中盤の3人と2センターバックには経験のある選手がいる。ただ、サイドを攻略するチャンスは逆にあるかなと思っていて、そこは今日のトレーニングでいい話し合いができました。ゴールをこじ開けるのは真ん中だけではないので、うまく解決策は見出せると思います」と、4日の練習後に語った。

 守備では中央を締め、攻撃に転じればサイドから押し込む。これがクロアチア代表戦で日本代表の勝ち筋になるだろうか。

 田中は「運動量も試合の最後まで落ちず、走り切れる能力もある。自分たちがボールを握っていても、『相手を走らせている』という感覚がないくらい走れる力がある。本当に簡単な相手じゃない」と、改めて最大限の警戒を口にしていた。

 チーム全体のクオリティはドイツ代表やスペイン代表に及ばずとも、ある意味でクロアチア代表の方が攻略の難易度は高いかもしれない。ベスト8の景色を見るために破らなければならない前回大会ファイナリストの壁は、極めて分厚い。

(取材:元川悦子&舩木渉、文・構成:編集部)

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