日本代表はカタール・ワールドカップのグループステージで優勝候補ドイツ、スペインに2-1の逆転勝利を収め、E組を首位で突破。2大会連続の決勝トーナメント進出を果たした。

 史上初のベスト8入りが懸かる1回戦の相手はクロアチア。前回大会準優勝の強豪との大一番で、森保ジャパンはどんな戦いを見せるか。国内外のサッカー事情に精通し、今大会も現地で取材する河治良幸氏に、クロアチア攻略の3大ポイントを挙げてもらった。

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 日本が対戦するクロアチアは前回の準優勝チームで、しかも延長戦など接戦を制して勝ち上がった経験値は非常に侮れない。確かにドイツやスペインは明らかな”格上”のチームだったが、言い換えれば対策が立てやすかった。しかし、クロアチア戦は鉄板よりも粘土に拳を向けるような戦いになってくる。

 誤解を恐れずにいえば、日本が色々な要素を70~80点で持っているとするなら、クロアチアは80~90点で持っている。そこにモドリッチというテクニックもタクティカルも最高レベルの選手を擁していて、ブロゾビッチやコバチッチも、オンの技術を持ちながら、オフで汗をかける選手たちが揃っている。
 
 そういう意味で、3つのキーポイントも絞って挙げにくいのが正直なところだが、あえて整理してみた。

 1つ目は裏の裏に注意すること。日本がボールを奪ってカウンターで前に行けると思ったところで、クロアチアは素早く切り替えて守備に来る。そこで奪い返されると、カウンターのカウンターで裏返されてしまう。そうなると、クラマリッチやペリシッチといった選手の仕掛けなどに日本のディフェンスも後手に回ってしまうので、CBが身体を張るしか手がなくなってくる。

 そこで、ファーストパスやボールの持ち出しの狙いを明確にするのが大事だ。前向きでありながら、相手の守備にかからない選択をしていく必要がある。その先でパスカットされたり、ボールをロストする分には日本側も切り替えて、しっかりとリスクマネジメントできるはず。守備から攻撃に移るところで奪われて、裏返されないようにしたい。
 
 2つ目は”モドリッチ・ライン”を断ち切ること。モドリッチはクロアチアのキーマンであり、間違いなく注意するべき選手だが、完全に封じるのは難しい。絶妙なポジショニングや抜群のキープ力もさることながら、プレッシャーを利用するように出してくるサイドチェンジが、そのままチャンスにつながるケースも多い。特に右足のアウトにかけた独特なキックを完璧に封じ込めるのは不可能だろう。

 だからこそ、いざ出された時のパスの先がスイッチになるのを日本の選手たちは、あらかじめインプットしておくのが大事になる。モドリッチを直接止められなくても、パスの受け手にイメージ通りのプレーをさせなければ、ゴールまでの道筋を分断できるはずだ。
 
 3つ目は視界の外側を支配すること。クロアチアはボールサイドでの守備強度が非常に高い。そこを突破してフィニッシュに持ち込むのはかなりの難易度だ。

 しかし、コンパクトであるがゆえに守備ブロックの外側からのフリーランなどを見逃しがち。屈強なCBが揃うゴール前も、例えば速いクロスがファーに抜けたところで、SBの選手がアタッカーをチェックし切れていないことがある。

 右で伊東純也が仕掛けてクロスを上げた場合、左ワイドから南野拓実や三笘薫がジャストで走り込んで合わせるような形は、クロアチアのディフェンスが最も苦手とするところ。そこで直接シュートできなかったとしても、折り返しを中の選手がダイレクトで合わせるような形を作れたら得点チャンスはかなり高まるだろう。

 時に正面から挑むのも大事だが、インからアウト、アウトからインといった目先を変えてクロアチアのディフェンスを惑わして行きたい。

文●河治良幸

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