森保ジャパンの躍進を献身した堂安律が、「理想」と「現実」を語った。
現地時間12月5日、カタール・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦で、日本はクロアチアと対戦。43分に前田大然が先制点を奪うも、55分にイバン・ペリシッチに同点弾を奪われ、1-1でPK戦に突入した末に、悔し涙をのんだ。
いずれも途中出場のドイツ戦(2-1)とスペイン戦(2-1)でゴールを挙げていた24歳のレフティは、この一戦で今大会2度目の先発出場。自身がキッカーを務めたCKから前田の先制点を生むなどした後、87分までプレーした。
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クロアチア戦の翌日、堂安はまず自身初のW杯を「未熟さを知った大会でもあった。オリンピックが終わってああいう思いは二度としたくないと思いながら努力して、あれから1年やって、できたことと、できなかったことがもちろんあったし、色々なことを感じさせられた」と総括すると、現在の心境に関してはこう語った。
「悔しさより無力さと言ったほうが言葉的には近いかもしれない。途中交代してベンチから見ている時は、頑張れと応援したが、やっぱり悔しかったし、ピッチに立って何とかチームを助けたい思いがあった。それができていない状態だったので、そういう無力さはある」
ドイツとスペインから挙げた金星はともに、前半は耐えに耐え、攻撃的なカードを次々に切った後半での逆転。あえて言えば“弱者の戦い方”で掴んだものだった。堂安は「もちろん、スペイン、ドイツの時にやった戦い方は、全て僕たち選手がやりたいことではない。ただ勝つ可能性を上げるために取った手段」と、率直に思いを伝える。
「全員が理想としているサッカーではないのは、僕たちも分かっているし、コスタリカ、クロアチアとボールを少し持たしてくれた相手に対して、アイデアがなかった。昨日の前半45分は良かったが、課題かなと思う。やっぱり強豪国相手にこのワールドカップという舞台で、90分間しっかりボールを保持して勝ちたいというのは理想。積み上げるところは今からの4年間でたくさんあるかなと思う」
理想を追い求めた結果として思い出されるのが、ブラジルW杯だ。日本は守備に全振りし、カウンター一発で決勝トーナメントまで勝ち上がった南アフリカW杯を経て、本田圭佑や香川真司らを中心に、新スタイル構築を目ざした。
しかし、過去最強とも称されたメンバーで臨んだブラジルW杯では、まさかの未勝利でグループステージ敗退。あまりに厳しい現実を突きつけられた。同じ状況に陥ってしまうのではないかと不安視する声もあるが、堂安は当時と今では置かれた状況が違うと、断言する。
「良い選手が揃っているし、僕たちはそれができるポテンシャルがあると思うので、さっき言ったように理想を求めながら……。昨日も選手内で話したが、その例はやっぱり出て。南アフリカが終わって4年間、本田さんを先頭に理想を求めて、負けて敗退したというのは経験している選手たちが話してくれた。
だからこそ、この大会で粘り強い守備とか、少し理想とは程遠いができた部分はやっぱりベースとして持っていかなくてはいけない。そのベースを持ちながら、理想を追いかけるのがいいかな。あとは戦術的な理解度もやっぱり必要。スペインを見ても能力は高くないけど、あれだけボールを保持できるのは、ポジショニングや選手同士の意思疎通によるものだと思うので、それは日本人は間違いなくできると思っているし、求めていかないといけない」
カタールで築いたベースの上に、今後の4年間でどれだけのものを積み上げられるか。その成長の過程でも、堂安の献身に期待したい。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部