フランス戦で起こった判定事象を競技規則に則って独自考察
イングランド代表は現地時間12月10日、カタール・ワールドカップ(W杯)準々決勝でフランス代表と対戦し、1-2で敗れて敗退が決まった。この試合では、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)介入も含めた判定事象がいくつか起こったが、米スポーツ専門局「ESPN」の記者デール・ジョンソン氏が、競技規則に則って独自に見解を述べている。
イングランドに2度のPKが与えられるなど、判定でも話題を呼んだ大きなゲームだったが、前半25分頃に起こったVAR介入シーンにジョンソン氏が言及した。
ケインがDFダヨ・ウパメカノからボールを奪い仕掛けようとした際、ペナルティーエリアライン辺りでケインが倒れる。しかし主審の笛はなく、試合が途切れた時点でVARが介入。少し長めの確認があったが、結果的にファウルなしで試合は続行となった。
この場面では、ウパメカノの左足がケインの右足ふくらはぎと接触しているようにも見え、またペナルティーエリア内か否かぎりぎりの範囲だったことから物議を醸している。ジョンソン氏は「これはウパメカノによる明確なファウルだ」と見解を述べたうえで、「該当シーンでVARが判定できるのは“PKかどうか”のみで、フリーキック(FK)を見逃していた場合は判定に介入できない」と主張した。
VARが介入できる条件は(1)得点か得点ではないか(2)PKかPKではないか(3)退場(4)人間間違いの4つの条件に関する「見逃された重大な事象」と「はっきりとした明確な間違い」の場合に絞られる。今回はPKの可能性がありVARが介入したが、結果的にペナルティーエリア外だったという判定から、ファウルがあったとしてもVAR介入外となり主審の判定が尊重されたのではないかとジョンソン氏は推察している。
「ケインの脚のどの部分がラインに対してどの位置なのか」が論点
ファウルの地点がライン上か否かは、「日本代表のスペイン戦での決勝ゴールのボールのように、証明する証拠の重さがVARに求められるということになる」と記事では話を展開。「ケインの脚のどの部分がライン(ラインはボックスの中にあるため、そこにかかるとペナルティーとなる)に対してどの位置なのか」が論点になるとしている。
この点においてジョンソン氏は「テレビに映し出されたアングルは決定的なものはなかった」とし、「ペナルティーエリアのラインに正対しているカメラだけがVARに最良の証拠を与える」と指摘した。
しかしこの映像は、今の仕組みではVARと主審にのみ共有される。ジョンソン氏は「すべてはバックグラウンドで進行し、誰もがそのプロセスについて推測することになる。今のところFIFA(そしてUEFAも)は、チームが見ているものをサポーターに見せることさえ渋っているのだ」と現行の体制に苦言も呈していた。(FOOTBALL ZONE編集部)