旅の途中、他の被爆者らと共にシカゴで上映されていた、映画「オッペンハイマー」を見た。映画は、原爆の開発を指揮した理論物理学者・ロバート・オッペンハイマー(1904~67年)が、原爆投下による惨状を知り、苦悩を深めていく様子などを描いている。

「自分たちの国が原爆をつくってこれだけの被害を与えた。そしてその後、その兵器の後始末をつけきれずに、むしろ拡大する方向にきている。その『責任』をオッペンハイマーさんと同じように痛感しないと。そういう意味で今のアメリカ国民は少なくとも映画を見た人たちは、痛感したのではないかなと思う」(朝長さん)

 広島と長崎に原爆が投下され、終戦を迎えた時、アメリカは歓喜に沸いた。しかしそのきのこ雲の下では、何の罪もない多くの命が、人生が奪われた。それでも人類は核開発競争に陥り、核実験を繰り返してきた。

「今が最後のチャンスで、被爆者もここが最後のチャンスで、もう今からあと10年、15年後にはほとんどゼロになる」(朝長さん)

 キャラバンツアー終盤、朝長さんはイリノイ州・シカゴの子どもたちに向けて被爆体験講話を行なった。「12歳の子どもたちに被爆講話が出来た。『やっぱり核兵器はなくさないといけない』という結論は、彼ら自身がそれぞれ持つのではないか。それを最後に強調できたことが良かった。今回の旅の目的がまさにそこだった」(朝長さん)

被爆者の願いを次世代につなぐ若者
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