ディエゴ・マラドーナ氏が有名な「神の手ゴール」を決めた1986年ワールドカップのイングランド戦で着用していたユニホームが、スポーツ関連の品として史上最高額の714万2500ポンド(約11億4000万円)で落札されたとのニュースは世界で話題となった。
だが、その「神の手」の“被害者”は、マラドーナ氏とのユニホーム交換など考えられなかったと話している。たとえ交換していたとしても、「皿洗いにすら使うことはなかった」という。英紙『THE Sun』が報じた。
マラドーナ氏に伝説の「神の手」と「5人抜き」を決められて敗れた当時のイングランド守護神ピーター・シルトンは、Sunで「中国にあるお茶をすべてもらえるとしても(大金と引き換えでも)、あの日のことからマラドーナとユニホームを交換することはなかった」と話している。
「(交換しても)家で使うこともないだろうし、バンガローで皿洗いにすら使わなかっただろう。(交換した)スティーブ・ホッジがユニホームを持っていると分かっていたら、こうはならなかっただろうね。我々は引き裂いて粉々にしていたはずだ。そうならなくて、ホッジは喜んでいるだろう。我々に言わなかったのだから、自分がしたことを彼は分かっていた。我々が見つけなくて、彼は良かったね」
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落札者は明かされていないが、中東のグループ会社とも報じられている。ユニホームが英雄マラドーナ氏の母国アルゼンチンに渡らなかったことで、シルトンは「我々は最後に笑うことができた。あのワールドカップが騙されたことに対する誌的な正義だ」と述べた。
さらに、シルトンは「キャプテンだった私は今でも傷ついている。ワールドカップで優勝することにしか興味がなかったんだ。マラドーナとユニホームを交換なんて、決して思わなかったね。ただ、あれだけの額で売れたのだから、交換しておくべきだったかもしれないな」と続けている。
「ホッジのことを思うとうれしいよ。マラドーナが我々を騙したことから、彼は大金を得たんだ。私のキャリアで最もつらかった試合のひとつだが、そこから得た幸運だね」
シルトンの傷が癒えることはないかもしれない。だが確かなのは、マラドーナ氏のユニホームにまつわるエピソードはサッカーの歴史を彩っており、今回の落札でまた新たにエピソードがひとつ加わったということだ。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部