まずこの一戦の分析を始める前に、国際親善試合である点を強調しておく必要がある。しかも相手のパラグアイはワールドカップ南米予選を8位で終え、チーム状況は芳しくない。日本が支配できる、いや支配すべき試合だった。

 森保一監督が “石工型”ではなく、“芸術型”の選手を中盤に並べたのも、そうした相手との力関係を考慮したのかもしれない。そして日本は4-1で大勝した。しかも内容も説得力があるもので、選手たちが楽しそうにプレーしている姿が印象的だった。

 サッカーはゴール前の攻防が勝ち負けに直結するスポーツだ。日本代表について海外のメディアからよく指摘されるのがその点におけるひ弱さだ。そんな中、森保ジャパンのその試合におけるチームとしての狙いを示す指標は中盤、とくにインサイドハーフの人選にある。

 これは決して矛盾しているわけではない。なぜなら指揮官は、守備を意識してプレッシングの効くハードワーカーを選ぶことも、攻撃に比重を置いてテクニシャンを選ぶこともできるからだ。彼らはW杯予選中、前者の布陣に慣れ親しんでいた。実際、6日に対戦するブラジル代表のような相手には守備重視のゲームプランで臨むのが定石であり、その首尾一貫した戦い方が功を奏し、予選突破にも成功している。

 しかし、森保監督はパラグアイ戦では後者を選択し、原口元気と鎌田大地をスタメンで起用。2人はその期待に応え、左右ウイングの三苫薫と堂安律とともにファイナルサードで躍動した。原口は2アシスト、鎌田はポスト直撃のシュートとPK奪取を呼ぶスルーパスに加え、1得点1アシスト、堂安は1アシスト、三苫は1得点といずれも得点に絡む活躍を披露。今後、プレースタイルや中盤の人選を巡る論争が活発化していきそうだ。
 
 注目に値するのは、CFとして先発出場し、全体的にそつのないプレー見せた浅野拓磨の背後にこの4人のタレントが並んでいたにもかかわらず、チームの戦い方は大きく変わらなかったことだ。ボール保持率はいつもより高かった印象があるが、相手の守備組織が整う前に手数を掛けずにゴールに迫る速攻がメインであり続けた。それはボール奪取からシュートに至るまでのパスの本数に表れていた。

 例えば、10分過ぎの鎌田のポスト直撃のシュートや浅野の先制ゴールは、いずれも少ないパスでフィニッシュまで持ち込んだものだった。一方、じっくりパスを回しつつ攻め手を探る遅攻からは、なかなかチャンスを作ることができなかった。

 原口と鎌田は、熟練度という点では常時スタメンで起用されてきた守田英正と田中碧と比べると見劣りはしたものの、同じようにプレスに奔走し、何本か前線へ質の高いパスを送り込み、自らもフィニッシュに絡んだ。
 相手のシステムとの噛み合わせも追い風になった。パラグアイは中盤をダイヤモンド形に構成し、サイドにスペースが生まれた。三苫にとっては絶好のシチュエーションで、持ち前のドリブルを存分に披露した。

 また右の堂安も、開始当初はやや消極的だったが、同サイドの山根視来のサポートも受けて徐々にチャンスに絡む機会が増え、ヒールパスなど大胆なプレーも見せた。鎌田のヘディングによる2点目はこの2人のお膳立てから生まれたものだ。
 
 時間が経過するにつれ試合の流れは日本に傾き、選手たちのインスピレーションも冴えていた。フィジカルを含めたすべての面においてパラグアイを上回っていたのはその証左だ。守備陣の中では、伊藤洋輝と谷口彰悟のプレーが印象に残った。

 前者はセットプレーで相手に脅威を与え、後者はガブリエル・アバロスとデルリス・ゴンサレスの2トップに対し、的確なポジショニングで常に先手を取りながら、堅実かつ迅速な守備対応を見せた。唯一、惜しまれるのが失点の場面で、デルリスへの寄せが甘く、シュートを許してしまった。冨安健洋であれば、フィニッシュに持ち込ませなかったのではと思われたプレーだった。

 一方、GKのシュミット・ダニエルは、この失点でクリーンシートは達成できなかったが、 体格の割には俊敏性に優れ、ハイボールの処理も落ち着いていた。

 後半も交代でメンバーが大幅に入れ替わった後も、試合は日本のペースで進行し、その流れの中で田中が鮮やかなミドルシュートを決め、チーム4点目を挙げた。途中出場の選手も含めて、総じて日本の優位性が際立った一戦だった。ただ冒頭で述べたように、相手がパラグアイであった点を差し引いて評価する必要がある。

 次はブラジル戦。本番のスペインとドイツに向けた試金石としても格好の相手である強豪にどう立ち向かうか、森保ジャパンの戦いに注目したい。

文●ダビド・フェルナンデス(ラジオ・マルカ)
翻訳●下村正幸

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