本戦まで残り約5カ月だ
パラグアイ、ブラジル、ガーナ、チュニジアの4カ国とのテストゲームを終えた日本代表。この4連戦は本戦に向けた準備であるとともにワールドカップ・カタール大会でのメンバー入りを決める大事な選考会にもなっている。
FW陣で評価を上げたのは三笘薫と堂安律、前田大然の3人だ。三笘のサイドからの突破力はさすがであり、快勝となったパラグアイ、ガーナ戦では1ゴールずつ決めている。単独での突破を成功させられる数少ない選手であり、今後も重宝されることになるだろう。気になるのは彼に代われる選手がいないことであり、グループステージの3試合でフル出場させれば終盤にガス欠することは目に見えている。
堂安は右ウイングで伊東純也とは違った戦い方を見せてくれた。右サイドに置かれる左利きということもあって中でプレイすることが多く、中央を生かした攻撃が目立った。伊東は右サイドに置かれる右利きの選手であり、縦への突破が多く中央の選手がボールに触れられない時間があるが、堂安を起用することで違った視点から攻撃が進められる。172cmと小柄な選手だが、フィジカルが強くキープ力がある。前線で時間を作ることができ、より得点力が上がれば伊東の牙城を崩すことは十分に可能だ。
前田は終盤に投入されるスーパーサブとして地位を確立した。チームトップのスプリント力を持っており、攻守両面でその武器は生かされていた。とくに相手のビルドアップに対するプレッシャーは凄まじく、敵陣深い位置でボールを奪えば大きなチャンスとなる。交代枠が3人から5人になったことも前田には追い風であり、このままいけばグループステージ全3試合で起用されることになるだろう。
伊東はこの4連戦で評価を上げたわけではないが、右ウイングの1番手であることには変わりない。しかし気になったのはハーフウェイライン付近からのビルドアップか。アジア最終予選であれば伊東にボールが届けられる頃には敵陣深い位置まで侵入しているが、この4連戦では低い位置で受けることが多かった。そのためかボールを運ぶ手段がドリブルしかなく苦労しており、今後の改善点となる。
前田以外の浅野拓磨、上田綺世、古橋亨梧の3人は存在感を見せられなかった。しかし彼ら個人の問題というよりも、後方からのビルドアップ、アタッキングサードでの工夫がなされていないチーム全体の課題であり、彼らの評価は難しい。ボールを収められる、空中戦が強いという点で現状は上田が抜けているように感じるが、次の代表戦で序列が明らかになるか。
3トップの中で最も評価を下げてしまったのは南野拓実だ。中央でプレイするセカンドストライカーが彼の適性だが、代表では左ウイングに置かれており良さが出ていない。チュニジア戦は伊藤洋輝と左サイドで組んでおり、スルーパスから裏へ抜け出すなどいい感触もあったがすぐに対応され、難しいゲームとなってしまった。後半からはトップ下で起用される時間もあったが、後半26分に久保建英と交代でベンチに下がっている。10番を背負う選手で落選はないといえるが、このままではW杯本戦で中心人物になるのは難しいだろう。
4ゴールを決めるゲームもあったが、FW陣への評価はそれほど高くはない。前田、堂安という新たな戦力が出てきたのは喜ばしいことだが、ストライカーの先発が未だ定まっていないことは危機感を覚えるべきだ。今回招集外となった大迫勇也含め7月のE-1選手権ではストライカー探しが始まることになるだろう。