9月下旬のドイツ遠征に参加する日本代表のメンバーが発表された。今回の遠征は、2か月後に迫るワールドカップの開幕前、最後の準備期間となる。カタールの地で躍進するために、この貴重な機会をいかに活用すべきなのか、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が激論を交わした。

■最適解が見えないポジション

――コンディション次第ということですが、アメリカ戦にぶつける現時点でのベストメンバーはどのような顔ぶれになりますか。

後藤「まあ、遠藤航は堅いだろうね。それ以外にフィールドプレーヤーで絶対的存在というのは、伊東純也くらいかな」

大住「一番分からないのはCFだよね。調子の良い鎌田大地を活かすためにフォーメーションを変えるとしても、鎌田の前に誰かを置かないといけない」

後藤「CFは全員がベストのコンディションで集まっても、誰になるか分からない」

大住「一番近いのは前田大然かなという感じがするけど。あるいは古橋亨梧か。上田綺世のベルギーでのプレーぶりを見ていると、まだヨーロッパのリズムに慣れていない感じがする」

――最終ラインは、どうなりますか。

大住「プレーできる状態だったら、酒井宏樹、冨安健洋、吉田麻也、伊藤洋輝。GKは権田修一。予選の最後の頃のメンバーだよね。中盤は遠藤と守田英正と、あとは田中碧なのか、旗手怜央なのか、堂安律なのか。右は伊東純也、左は南野拓実。そしてやはり、CFは誰かということになる」

後藤「上田か町野修斗がフィットしてくれれば一番だけどね。難しいかもしれないけど、一度はやらせてみるべきだよね。」

■個人の力があるアメリカ

――気になるポイントはどこですか。

後藤「僕はCB。前の方は、その時の勢いで何とかなるかもしれないけど、ディフェンスはちゃんとした組織ができていないといけないよな、というのが一番心配。冨安が90分間できるのか、とかね」

大住「僕も気になるのは守備なんだよ。ワールドカップのことを考えると、簡単にドイツに点を取られたら、そこで試合は終わってしまうから。とにかく、無失点の時間を長くしないといけない。そのためには、チームディフェンスが一番の鍵で、前線からの守備、中盤との連係、最終ラインが最後を仕上げるというような守備がちゃんとできないといけない。もちろんCBの出来とかパフォーマンスの良さは必要だけど、チーム全体の守備が機能するかというのが、すごく大事」

後藤「日本の場合、個人能力で点を取れる選手がいるわけじゃないから、ちゃんと守備をして、ちゃんとボールを奪わないと、攻撃につながらない。組織的に守備をして、良い形でボールを奪って、攻撃に移らないといけないんだから、やっぱり守備が大事」

大住「アメリカには、個人として速かったり、圧倒的な個人技を持っている選手もいる。そういう相手に、一発で抜け出されてやられることなく、耐えて耐えて相手にチャンスを与えずに、どのくらいチームとしてプレーできるか。その間にうまく良い形で取ったら、どういう形でフィニッシュまで結びつけられるかというのがテーマになると思う」

■守備が崩れると攻撃できない

後藤「耐えて守ってゼロに抑える守備もあるし、うまくはめて良いところで良い形で奪って攻撃に移るという守備もあるからね」

大住「状況に応じて、両方使い分けないといけないわけだよ」

後藤「90分間ずっと、うまくはめてコントロールできるわけじゃないから、耐える時間は耐える。逆に、うまく攻撃に移れる時間帯もあるはずだし」

大住「攻撃の形はできると思うんだよ。例えばスピードがある伊東純也だとか、能力を持った選手はいるからね」

後藤「ブラジル代表相手にも、形にまでは持っていけていたんだから」

大住「フィニッシュまでには至らなかったけどね。最後のパスを入れるんだけど、通らなかった感じだった」

後藤「でも、過去のブラジル戦以上に、形をつくることはできた試合だった。その先につながらなかったけどね」

大住「今の日本の攻撃陣が、すごくタイミング良く絡んで崩しのプレーができれば、世界のどんな相手であろうとも、ある程度できるということだよね」

後藤「ただし、守備がめちゃくちゃになっちゃって、ただ蹴り返すような守備になったら、前にボールが渡っても選手が孤立しちゃう。そうなったら、日本の選手ではどうしようもない。モンスターはいないんだから」