ドイツで開催されたキリンチャレンジカップ2022。9月23日のアメリカ代表戦に続いて、27日に2試合目が行われ、サッカー日本代表がエクアドル代表に0-0で引き分けた。

後半38分にGKシュミット・ダニエルが相手のFWエネル・バレンシアのPKを止めたことで、かろうじてスコアレスドローに持ち込んだ日本代表。11月21日に開幕するFIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)に向け、森保ジャパンが解決すべき課題とは何か。この試合で起きた現象から分析したい。

関連記事:森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】


試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
キリンチャレンジカップ2022、日本代表vsエクアドル代表のスターティングメンバー

ハイプレスをかけられなかった日本代表

基本布陣[4-1-2-3]でこの試合に臨んだエクアドル代表は、アンカーのジェクソン・メンデスが適宜2センターバック間に降り、ビルドアップに関与。ピエロ・インカピエとジャクソン・ポロソの2センターバックと、メンデスの計3人を起点に攻撃を組み立てた。

日本代表は[4-4-2]の守備隊形を敷き、キックオフ直後こそハイプレスの姿勢を示したものの、エクアドル代表の最終ライン近辺で2対3の数的不利が生じていたため、なかなか敵陣でボールを回収できず。独力で相手のプレスをかわし、ボールを前方に運べるインカピエとポロソにも手を焼き、自陣への撤退守備を余儀なくされた。

試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
エクアドル代表の攻撃時の隊形変化

9月23日に対戦したアメリカ代表とは異なり、エクアドル代表が自陣からのパスワークにこだわらず、ロングパス主体の攻撃を織り交ぜてきたため、日本代表が得意とするハイプレスが封じられる形に。

試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
エクアドル代表 写真:Getty Images

前半11分03秒からのエクアドル代表の攻撃では、最終ラインに降りたメンデスから左ウイングFWロマーリオ・イバーラへのロングパスが繋がってしまい、その後のセカンドボールも回収できず。相手のオフサイドの反則に助けられたが、この場面では日本代表の最終ラインと中盤が間延びしており、大ピンチや失点に繋がっていてもおかしくなかった。

これ以降も、エクアドル代表に守備の出足の鋭さやフィジカルコンタクトの強度で上回られ、制空権も握られたことで、日本代表は苦戦を強いられている。アメリカ代表戦の後半でも、相手が3バックを敷いた際の守備の段取りが曖昧だったが、カタールW杯を前にまたもこの問題が浮き彫りとなった。

試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
日本代表 森保一監督 写真:Getty Images

森保監督が着手すべき布陣とは

直近2試合における日本代表の収穫は、ハイプレスからの速攻という、大まかなゲームプランがチーム内で共有されたこと。特にアメリカ代表戦では快足FW前田大然、フィジカルコンタクトに長ける鎌田大地、守備の出足が鋭い久保建英と伊東純也の両サイドハーフが森保一監督の先発起用に応え、獰猛なプレッシングから何度もチャンスを作った。

カタールW杯に向けて森保監督が着手すべきは、ハイプレスのバリエーションを増やすことだろう。

試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
日本代表 FW鎌田大地 写真:Getty Images

アメリカ代表戦の前半では、相手の2センターバックを鎌田と前田の2トップが捕捉。更にこの2人が相手のパスを片方のサイドに誘導することでハイプレスを成立させたが、前述の通り、アメリカ代表が布陣を[3-4-2-1]に変えた後半開始以降はこの戦法が通用せず。カタールW杯のグループステージで、ボール保持力が高く、隊形変化のバリエーションも豊富なドイツ代表やスペイン代表と対戦することを踏まえると、[4-4-2]以外の守備組織の練度を高めることは急務だ。

ここで焦点を当てるべきは、森保監督がサンフレッチェ広島を率いていた頃(2012-2017)に採用し、アメリカ代表戦の終盤でも見られた[3-4-2-1]の布陣だろう。

この布陣のメリットは、ハイプレス時に[5-2-3]、自陣撤退時に[5-4-1]に変形することで、3バックでビルドアップを行うチームに対してもメリハリのある守備ができる点。相手の3バックに対し、1トップと2シャドーの計3人で数的同数の局面を作り、ハイプレスを仕掛ければ敵陣でボールを回収しやすい。仮にハイプレスが通用せず、[5-4-1]での自陣撤退を強いられたとしても、3センターバックと2ボランチで中央を固めることで、セカンドボールを回収できる可能性が上がる。4バックでは埋めにくい、センターバックとサイドのDFの間やハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、ペナルティエリアの両脇を含む左右の内側のレーン)をケアしやすいのも、5バックの強みだ。

試したかったあの布陣。森保ジャパンの不安材料とは【日本VSエクアドル代表戦分析】
日本代表vsアメリカ代表 写真:Getty Images

エクアドル代表戦の先発組やベンチ入りメンバーで、この布陣を組むことは可能だっただろう。ビルドアップ時に3バックを形成するエクアドル代表に対し、この布陣で応戦していれば、試合展開が変わったかもしれない。アメリカ代表戦とエクアドル代表戦の2試合で、この布陣を試す時間が短かったのが残念だ。

攻め込まれる時間帯が長かったなかで、アメリカ代表とエクアドル代表を相手に無失点試合を達成できたことは、ポジティブな要素と言える。遠藤航、田中碧、守田英正をはじめ、中盤での迎撃能力が高い選手が今の日本代表には揃っているだけに、相手の布陣や隊形変化に即したハイプレスのかけ方を実践できれば、ドイツ代表やスペイン代表に対しても接戦に持ち込めるはず。W杯前最後のテストマッチとなるカナダ代表戦(11月17日)で、森保監督にとって馴染みのある[3-4-2-1]の完成度を高めたいところだ。