カタール・ワールドカップのグループステージ第3戦で日本代表と対戦するスペイン代表はどんなメンバーになるのか。11月12日に予定されている発表を前に、日刊紙『エル・パイス紙』でスペイン代表番を務めるラディスラオ・ハビエル・モニーノ記者に、26人を予想してもらった。

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【GK】
 ルイス・エンリケ監督は、後方から攻撃を組み立て、相手ゴールに迫るスタイルを志向しており、GKの人選もその戦術コンセプトに基づいて進められてきた。その過程でダビド・デ・ヘア、ケパ・アリサバラガ、パウ・ロペスが代表から遠ざかる一方で、ウナイ・シモン、ロベルト・サンチェス、ダビド・ラジャが定着した。

 U・シモンはL・エンリケ監督の下で足死との技術を高めたが、他の2人に比べると見劣りする。それでも正守護神に君臨し続けているのは、リスクを冒しても繋ごうとする積極性とミスをカバーする挽回力をルイス・エンリケ監督が高く評価しているからだ。

【右SB】
 ダニエル・カルバハルとセサル・アスピリクエタはともに30歳を超えるベテランだが、タイプは異なる。前者はプレーの展開を先読みする能力に優れ、機を見たオーバーラップが持ち味。守りを固める相手に向いている。一方、CBもこなす後者は、守備に比重を置いた戦い方を選択する際に有効なオプションだ。マルコス・ジョレンテもこのポジションでの起用が可能だ。
 
【CB】
 エメリック・ラポルトがリーダー格。パートナーは流動的で、イニゴ・マルティネス、エリク・ガルシア、パウ・トーレスが交互に務める。エリク・ガルシアを除く3人は左利きだが、指揮官は左利き同士のCBを並べることを厭わない。

 重視しているのはGK同様に、ビルドアップ能力に優れていること。諸刃の剣となりうるのが、待望論が高まっているセルヒオ・ラモスの招集だ。前述したラポルトの立場が変わるだけでなく、ルイス・エンリケが絶対的なリーダーとして君臨し、背中で引っ張るタイプのキャプテン、ブスケッツが支えるチーム内のパワーバランスが崩れる恐れがあり、選外とした。 

【左SB】
 指揮官のジョルディ・アルバへの信頼は絶大で、コンディションさえよければ、今なお世界最高の左SBと考えている。カルバハルと同じく、ダイアゴナルの動き、ゴールライン際までドリブルで侵入してクロスを折り返すといった相手DFの背後を取るプレーを評価しており、攻撃面で重要な存在であり続けている。

 2番手のガヤも高い攻撃性能の持ち主だ。選外としたマルコス・アロンソは同じく攻撃的なSBでジョルディやガヤにはない空中戦の強さも兼ね備えるが、守備に不安を抱えている点がネックだ。
 
【アンカー】
 ブスケッツだけでなく、ロドリもL・エンリケ監督にとって絶対的な存在だ。実際、2人について、「安心感を与えてくれる存在」と明言している。そんな中、ブスケッツにあって、ロドリにないのが、1試合に2、3度訪れる非常に難しい局面においてパスを捌く能力だ。チームメイトが安心してボールを預けられる所以でもある。

 ロドリはブスケッツとの比較においてポジショニングで引けを取らず、正確なパスを軸に冷静に攻撃を組み立て、球際の強さでは大きく上回る。すでにレギュラーを務める力量の持ち主だが、ブスケッツはこのポジションで歴代最高クラスの選手だ。百戦錬磨のベテランと比べると、今なお分が悪い。
 
【インサイドハーフ】
 ガビとペドリは、それぞれブスケッツとともに中盤の一角を担うことが運命づけられている。監督の抜擢に応え代表に定着。W杯は今回が初めてだが、ペドリはEURO、ガビはネーションズリーグとトップレベルでのプレーを経験済みである点も心強い。すでに主力格の2人の活躍はスペインの命運を握っていると言っても過言ではない。

 身体能力に長けるM・ジョレンテは、相手によって先発で起用される可能性がある。また前述したように右SBをこなすなど、指揮官はその万能性を高く評価している。カルロス・ソレールもパスセンスと視野を兼ね備え、プレースキッカーとしても優秀だ。ペドリやガビのようなドリブル突破力はないが、戦術理解度も高く、確かな実力の持ち主だ。

 コンディション次第という条件付きだが、チアゴ・アルカンタラもメンバー入りを果たしそうだ。中盤の3つのポジションを全てこなす使い勝手の良さ、中盤で放つ存在感をルイス・エンリケ監督は買っている。コケも同じく様々な起用法に応えることができる選手で、ドレッシングルームのまとめ役としても重要な存在だ。

 ダニ・オルモもインサイドMFとして起用されたことがある。選外としたが、ルイス・エンリケ監督がボックス・トゥ・ボックス型MFを加えたいのであれば、ミケル・メリーノが浮上する。
 
【FW】
 CFは序列も明確で、アルバロ・モラタが一番手、ボルハ・イグレシアスが控えだ。問題となっているのは、ミケル・オジャルサバル、ジェラール・モレーノと怪我人が続出しているウイングの人選だ。そんな中、株が急上昇中の若手が9月シリーズで活躍を見せたニコ・ウィリアムスで、ファンやメディアの間では先発待望論も持ち上がっている。

 ジェレミ・ピノは積極果敢なドリブル、ダニ・オルモは前述したインサイドMFに加え、前線の3つのポジションをこなせるポリバレント性が魅力だ。コンディション不良組の中で、最も厳しい状況にあるのが左膝前十字靱帯断裂という重度の怪我からの復活を期すオジャルサバルだ。ルイス・エンリケ監督は可能な限り回復を待つ意向を示しているが、もちろん無理させる考えはない。
 
 ジェラールは当初の診断(左足ハムストリングに筋肉損傷)ではW杯に間に合う見込みだったが、復帰が長引いており、雲行きが怪しくなってきた。度重なる怪我から復帰したアンス・ファティはここからコンディションが上向いてくれば、レギュラーでの起用も考えられる。

 常連組のフェラン・トーレスはバルサで控えに甘んじる現状を踏まえると、サプライズ落選もありうる。貴重な得点源であるパブロ・サラビアもパリ・サンジェルマンで出場機会が限られており、安泰ではない。

文●ラディスラオ・ハビエル・モニーノ(エル・パイス紙スペイン代表番)
翻訳●下村正幸

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